今度のリーアム無双は通勤電車で爆裂だッ!?/映画『トレイン・ミッション』

トレイン・ミッション (監督:ジャウム・コレット=セラ 2018年アメリカ・イギリス・フランス映画)

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今度のリーアム無双は通勤電車で爆裂なんだ……ッ!?

主人公リーアムは今、極限状況の中にあった。そこは朝の通勤満員電車。殺人的な過密状況の中でじっとりと押し黙りながら押し合いへし合いしている周りの乗客たちがリーアムに対して殺意とも取れる行動を起こしはじめているのだ。目の前の腐ったサバのような目をした中年サラリーマンはウンコを食ったとしか思えないような口臭をリーアムにハァハァ吐きかけていた。右隣の白髪のジジイは四つ折りにした新聞で電車の揺れに合わせリーアムの首元をバサバサと叩いていた。左隣の顔色の悪い学生風の男は安物のイヤフォンから漏れるキンキンの高音を鳴らせ続けていた。歌詞までよく聞き取れた。「♪明日のォー為にィー明日のォー為にィー」。うるせえ。お前に明日なんかない。後ろのOLはスマホにご執心のようだがこのスマホが電車の振動に合わせてガツッ!ガツッ!とリズミカルにリーアムの背中をエグり続けまくっていた。おまけに朝のシャンプーを乾かしている暇がなかったのかリーアムの首筋に湿った髪の毛がバサリバサリかかってくるのだ。「グヌヌ……」。リーアムの精神はやすりにかけられたかのようにじっくり確実に苛まれていた。そして遂にそれが起こったのだ。「ブアックシュッ!」目の前のウンコ口臭野郎がリーアムにウンコ臭のくしゃみを吐きかけたのである。ウボァーッ!!」リーアムの理性が弾け飛んだ。そしてリーアムは手に持っていたアタッシュケースからドイツ製短機関銃ヘッケラー&コッホMP7を取り出すと周囲の乗客目掛け総弾数30+1のマガジンが空になるまで4.6mm弾を撃ち続けたのだった。これが今作、『トレイン・ミッション』の全貌である。

……というのは真っ赤な嘘です。

(ヘッケラー&コッホMP7)

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えー、長々とした冗談でしたが皆さんお元気でしょうか。リーアム・ニーソン主演のサスペンス・アクション『トレイン・ミッション』でございます。「トレイン・ミッション」っちゅうぐらいですから今作のリーアムはなにしろトレインでミッションをこなすわけです。

リーアム扮する保険のセールスマン、マイケルは電車の中で見知らぬ女からある申し出を受けます。それは電車の中からある男を探し出せば10万ドルの報奨金を渡す、というもの。最初は胡散臭く思っていたもののついつい引き受けてしまったマイケル。そしてそこから地獄が始まります。マイケルは常に監視されており、ミッションを止めようとしても誰かに洩らそうとしても携帯電話に脅迫の電話が掛かってくる。しかも、彼の家族が人質になっているようなんです。いったいどんな巨大な陰謀が背後で動いているのか、犯人は誰なのか、犯人が探す男は誰なのか、何故自分が選ばれたのか。こうして謎が謎を呼ぶ物語が展開してゆくという訳なんですね。

しかしこれ、観ているとなんか以前似たような作品を観たことがあるような気がしてくるんですね。そう、リーアム・ニーソン主演のサスペンス映画『フライト・ゲーム』(2011)なんですよ。あれも「姿の見えない誰かによる陰謀」に巻き込まれた男の壮絶な死闘が描かれる。飛行中の旅客機という閉鎖空間の中でリーアム扮する主人公に謎の指令が次々と下され、同時に旅客機の中で次々と死体が転がってゆく。作りが同じなんですね。何故って『フライト・ゲーム』の監督はこの『トレイン・ミッション』と同じジャウム・コレット=セラだからなんですね!

リーアムとジャウム監督は前出の『フライト・ゲーム』の他にこれまで『アンノウン』(2011)、『ラン・オールナイト』(2015)でもタッグを組んでおり、この『トレイン・ミッション』は二人の4作目の作品になるんですね。いやあ似るわけだ。謎めいた出だしこそ前のめりになって観てしまうけれども、物語が進むにつれどんどん無茶な展開になっていって段々「いやいくらなんでもそれはありえへんやろ」という気分になってくる。シナリオが乱暴なんだよね。だから『フライト・ゲーム』が詰まんなかった人にはお勧めしないしツッコミどころの多い作品にすぐブチキレちゃう人にもお勧めしない。

でもオレは楽しかったな!まあなにしろフィクションなんてェのはそもそも嘘の固まりなんで、その嘘の付き方がどこまで許せるかでフィクションの評価が変わってくるんだろうと思うけど、オレはこの作品の「ちょっと考えればありえないってすぐ分かるような嘘だけど話を盛り上げるためにそんなありえない展開ありえない状況をガンガンに盛り込んでゆく力技」ってェ部分に「よっしゃあイッチョ騙されてやりましょうや!」と思えたわけだ。だいたいさあ、隠密の為に計画された陰謀がラストに行くほど状況が派手になり過ぎてこりゃ隠密どころじゃねーだろ!ってな部分はホント微笑ましかったけどね。いや、いいのいいの、リーアム無双が見られたから!!ってか主人公、保険セールスマンとかいいながら以前は警官でしたあとか、確信犯すぎだろ! 

こういった物語的側面の他に面白かったのは舞台となるアメリカの通勤電車事情。まあもちろんこれはフィクションなんでどこまで現実に即しているのかは判断できませんけど、あー日本とはこんな所こんな部分で違うんだ―と思いながら観るのは結構新鮮でしたね。こんなふうに今でもアメリカは切符切ったり切符確認したりしてるのかな。座席の後ろに切符挟むのも面白かった。あと、通勤電車でいつも一緒になる乗客と顔見知りになってお話してみたりとかね。そんな部分にも楽しさのある映画でした。


『トレイン・ミッション』予告編(特報予告)/シネマトクラス 

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