ローランド・エメリッヒの新作ディザスター映画『ムーンフォール』は当然のごとくトンデモだったッ!?

ムーンフォール (監督:ローランド・エメリッヒ 2022年アメリカ映画)

「月が地球に衝突しちゃうよ!?えらいこっちゃえらいこっちゃ!」という映画『ムーンフォール』である。いつも忘れた頃にいつのまにか製作される「ディザスター・ムービー」ってヤツである。だいたいトンチキな映画ばかりである。そしてその監督というのが『2012』とか『デイ・アフター・トゥモロー』とかやっぱり「ディザスター」な映画ばかり撮り、さらに『インディペンデンス・デイ』まで撮っているローランド・エメリッヒだというではないか。

いやあ、これは絶対観なきゃいけないね、うん。(日本ではAmazon Primeでの配信となります)

まあトンチキ映画とはいえ配役はしっかりしていて、『チョコレート』、『X-メン』のハル・ベリー、『死霊館』シリーズ、『アクアマン』のパトリック・ウィルソン、『ゲーム・オブ・スローンズ』のおデブちゃんナイトウォッチ役ジョン・ブラッドリーが主演している。ほかのマイケル・ペーニャ、チャーリー・プラマー、ドナルド・サザーランドが共演。

《物語》原因不明の力によって月が本来の軌道から弾き出され、あと数週間で地球に激突するという驚くべき事実がNASAアメリカ航空宇宙局)にもたらされる。NASAは現地調査を試みようとするが、同時に組織内部で、とある情報が隠ぺいされていたことが発覚する。地球と月を救うため、NASA副長官のジョー・ファウラー、一流の宇宙飛行士だったブライアン・ハーパー、天文学博士を自称するKC・ハウスマンの3人が立ち上がり、未曽有の危機に立ち向かう。

ムーンフォール : 作品情報 - 映画.com

それにしてもなぜ「月が地球に落ちてくる」のかである。そもそも今現在月が地球に落ちてこないのは物理学的にそうなっているからである(←突っ込んでるくせによくわかってないオレ)。ではそんな月がなぜ落ちてくるのか。

それはね、月がXXXだったからなんだよ!

 もうね。その理由が説明された段階で、オレはソファから転げ落ち飲んでいたビールを噴きそうになり気を落ち着けるために台所に行ってその日の洗い物を一通り片付けついでに洗濯物も取り込んでからもう一度テレビの前に戻りおもむろに正座して眉間に皺を寄せながら腹の底から絞り出すような声で「はあっ?」と言ってしまったぐらいだよ!

「月がXXXだった」って、それどんなQアノンなんだよッ!?ってか「月間ムー」ですらそんなアホな事は言わないよッ!?もうこれは全国の天文科学関係者ならびに科学マニアSFマニアを集めて「いかに『ムーンフォール』はトンデモ過ぎる設定をぶち込んできたか」の討論会を開きたいぐらいである。もちろん全員で『ムーンフォール』を視聴しながらである。いやあ、絶対盛り上がるなコレ。

とかなんとか言いつつ、あまりにバカバカしくて逆に「これでいいのかも?」と納得してしまったのも確かである。だってさあ、そもそもエメリッヒ映画だぜ!?こまけえことはいいんだよッ!

いや確かに科学考証もナニも科学以前のハナシではあるが、そんなことより「月がXXXだった」という大嘘の付き方で観ているこっちは虚を突かれて思考停止状態なわけであり、「潮汐力」とか「ロッシュの限界」とか一応それらしいことを言いながら(見せながら)結局全無視しているのはそれは確信犯だからである。それよりも「XXXな月」とかその月が地球すれすれにかすってくるとか、そんなのは大嘘とはいえ、とりあえず見た目的には面白いのだ。

この間観たネトフリ映画『グレイマン』の時も思ったが、ある種のエンタメ作品に必要なのは、斬新さとか独特さではなく「ルック(見た目)」と「テンポ」なんじゃないか、ということだ。あと細かい「イジリ」があるともっといい。実のところもう「物語」なんてものはずーっと前に出尽くしちゃって、あとは順列組み合わせの妙でいかに楽しむかだけだし、そもそもそんなこと自体を300年以上前にあのパスカル先生が肯定的におっしゃられていたぐらいだ。

そんな意味ではこの『ムーンフォール』、『ゼロ・グラヴィティ』みたいに始まった物語が『ディープ・インパクト』で『アルマゲドン』な展開を迎え、地球は『ジオストーム』状態となり、コトの真相はなんと『スタートレック』で(微妙なネタバレ)、最後は『グリーンランド 地球最後の2日間』な感じだった、と言えばいいだろうか。そしてその全編をエメリッヒらしい破壊の限りが尽くされ、観ていてウシャウシャと笑ってしまう、というところまでがこの映画の楽しみ方である。あー楽しかったー!

ちなみにもうちょっと科学的に月が地球に落ちてきたらどうなるか、の記事がGigazineにあったので参考までに。