『ドクター・ストレンジ:マルチバース・オブ・マッドネス』を観た。

ドクター・ストレンジマルチバース・オブ・マッドネス (監督:サム・ライミ 2022年アメリカ映画)

元天才外科医でMCU屈指の強さを誇る魔術師、ドクター・ストレンジの活躍を描く『ドクター・ストレンジ』の続編です。もともと主演のベネディクト・カンバーバッチが好きな俳優だったのと、まるで万華鏡のようにグルグル動くVFXが凄くて、1作目はMCU映画の中でも特に好きな作品でしたね。

この続編では先ごろ公開された『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(オレの感想はこちら)で扱われていた「マルチバース」がメインテーマとなり、新たな危機としてドクター・ストレンジを翻弄します。監督は『スパイダーマン』の他『死霊のはらわた』などホラー作品でも有名なサム・ライミ

【物語】マルチバースの扉を開いたことで変わりつつある世界を元に戻すため、アベンジャーズ屈指の強大な力を誇るスカーレット・ウィッチに助けを求めるストレンジ。しかし、もはや彼らの力だけではどうすることもできない恐るべき脅威が人類に迫っていた。その脅威の存在は、ドクター・ストレンジと全く同じ姿をした、もう一人の自分だった。 

ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス : 作品情報 - 映画.com

最初に書くと、扱われたテーマも順当だったし、VFXは前作にも増してとんでもないことになっていて、おまけにサム・ライミ印のホラーテイストまで炸裂しており、さらに最近のMCU作品の中では120分程度のサクッと観られる尺で、決して出来が悪いわけではないんですが、なんだかスカッとしない作品でしたね。

今作ではアベンジャーズ・メンバーであるワンダが登場し、物語の大きな鍵を握ることになるんですが、彼女の「変節」となる理由が、なんだか唐突に感じてしまったんですよ。調べてみるとこれ、ドラマ公開された『ワンダヴィジョン』の物語を踏襲している、ということだったんですね。オレは『ワンダヴィジョン』は観ていないんですが、観ていなくてもまあ理解できる範疇ではあるにせよ、なんだか「メンドくせえな」と感じてしまったんですよ。

あと「今度またMCUで絡ませます」といったキャラやら設定やらが出てきて、それはそれでいいですが、なんかこう「MCUの大きな潮流の中の1エピソード」を見せられているような気がして、1作として綺麗に完結してくれていないところが気になっちゃったんですよね。別に今に始まったことじゃないんですけど、今作はそれが顕著に思えてしまった。今後もMCUは「マルチバース」を中心的テーマとしてこういったクロスオーバーな作りが加速してゆくのでしょうか。

今作(と『スパイダーマンNWH』)で取り扱わていた「マルチバース」というのは平たく言えば並行宇宙ということなんでしょうが、マーベルコミック自体でも頻繁に取り扱われている以上この流れは必然なのでしょうけれど、なんでもあり過ぎてどうも腰が落ち着かない気がするんですよねえ。それにより物語の幅も広がるのでしょうが、ちょっと付いていけなくなってきたんですよ。で、それがまた「メンドくせえな」と思えちゃってねえ(『ソー:ラブ・アンド・サンダー』も楽しみにしてるんですが大丈夫かなあ)。

それとライミ印のホラーテイストは悪くなかったにせよ、ライミってキャラクターに対して冷淡なような気がするし、やっぱりこのヒトの作風って情感が薄くてどこかシツこい。見世物としては楽しいんですが、人間ドラマを描いていても「本当はそんなのどうでもいいと思ってるでしょ?」って感じちゃうんだよなあ。ホラー作品だとそれが効を奏したりもしますが、今作に限って言えばエグ味ばかりが目立っていたように思えました。なにしろ作品自体は悪くなかったんですが、オレとの相性が悪かったみたい。