ハロー!?ゴースト (監督:キム・ヨンタク 2010年 韓国映画)
幽霊が出てくるけどホラーじゃありません。この『ハロー!ゴ-スト』は人生に絶望した青年が幽霊に取り憑かれて大わらわ!?という作品なんですね。コメディタッチで大いに笑わせながら、最後の最後に大号泣必至の韓国映画です。主演は『猟奇的な彼女』『加速スキャンダル』のチャ・テヒョン、監督は『僕の中のあいつ』のキム・ヨンタク。
生きる希望をなくした青年サンマンは、投身自殺を図って川に飛び込むが失敗。病院に担ぎ込まれ、目が覚めると4人組の幽霊にとりつかれていた。彼らを成仏させるため、願い事をひとつずつかなえてあげることになったサンマンは、その過程で美しい看護師のヨンスに出会い、ひと目惚れ。幽霊たちの願いをかなえるごとに、サンマンとヨンスの距離は縮まっていき……。
主人公サンマンが幽霊を見るようになったのは、自殺未遂で臨死体験を起こし、現世と霊界との境界が薄くなったから、ということらしいんですね。サンマンに憑りついた幽霊はいずれもクセのある連中ばかり、いったいどんなキャラクターかというと:
・ヘビースモーカーのむさくるしいおっさん
・人間の女子にいつもちょっかいを出しているエロ爺さん
・なんだかクソ生意気なガキ(男の子)
・いつも泣いている鬱陶しいおばさん
……という4名なんです。というか幽霊だと4体になるんでしょうか?幽霊たちが言うには、彼らの望みを叶えてくれれば消えてくれるのだとか。そんなわけでサンマンの悪戦苦闘が始まります。しかしサンマンには幽霊が見えますが、他の一般人には見えません。幽霊とああでもないこうでもないと言い争うサンマンの姿は、他の人には空中と話しているキモい人になってしまいます。このあたりの描写がとても可笑しいんですね。
それと並行して描かれるのは、サンマンが病院で見初めた看護婦女子ヨンスに抱くほのかな恋心です。サンマンは彼女と出会うことで少しずつ生きることの実感を得てゆきます。とはいえヨンスも家族の問題で苦しんでおり、決してハッピーなだけの展開ではありません。
この物語では幾つもの対立項が描かれます。それは生きることと死ぬこと、喜びと悲しみ、愛と孤独、家族というものが孕む安らぎと鬱陶しさです。
主人公サンマンがなぜ生きる気力を失っていたのか、はっきりしたことは描かれませんが、彼はきっと絶望もない代わりに希望もない、ぼんやりと暗い人生を歩んできた青年だったのでしょう。そんな彼がうるさい幽霊たちやどこか影のある人間女子と出会い、「どうにかしなきゃ」と行動を起こすことで少しずつ生の実感を掴んでゆくんです。それは、「人生にはいい部分もあるよ」という楽観論ではなく、「人生にはいろんなことがあるけど、それに自分なりのアクションを起こすことで、生きることの意味と理由を掴んでゆくんだよ」ということなのでしょう。
映画はそれを、とてもハートフルなコメディとして描いてゆきますが、こういった構成を打ち出すことのできるシナリオの巧さに、そしてそれを演じ切る俳優たちの妙味に、またしても「韓国映画恐るべし」と感じてしまいました。
しかし、です。物語はそれだけではなかったんですよ。いろんなことが丸く収まり「ああよかったね」と思っていた物語の最後の最後で、ある真実が明かされるのですよ。そして、ここからの驚愕の展開に、もう大嵐に巻き込まれるかの如く涙涙の連続です!オレは「泣かせる映画」というのにはあまり興味がないのですが、いやここまでのドラマが用意してあったとは、実に感服してしまいました。もしも「泣かせる映画」に興味がある方なら、これはガチでお勧めです。現在アマゾンプライムでも視聴できますので是非ドウゾ。