プリンスのアルバムをコンプリートした《後篇》

Art Official Age

さて前回に引き続き「プリンス・アルバムをコンプリート」《後篇》に行ってみたい。多いからサクサク行くよ!(《前篇》はこちら

◎2001年~2010年

2001年: The Rainbow Children

レインボー・チルドレン

レインボー・チルドレン

 

「プリンスがジャズに挑戦」ということで結構期待したのだが、実はこれがそんなに面白くない。プリンスがジャズに遠慮しているって感じ。しかしこれも後半になると段々とプリンスらしさが発揮されて面白くなってこないこともない。

2002年: One Nite Alone...Live!

One Nite Alone... Live!

One Nite Alone... Live!

 

プリンス初のオフィシャル・ライブ盤。フィジカルでは3枚組で発売されたが、現在配信されているアルバムはフィジカル盤での1,2枚目のみを収録。ヒット曲満載ではあるが、全体的に洗練されたフリーセッションを聴かせられている感じ。あまり昔の下品さ下世話さを感じない。この前作がプリンス・ジャズ『The Rainbow Children』だったのでその雰囲気が持ち込まれたのかもな。

2002年:One Nite Alone... (Solo Piano and Voice by Prince)

One Nite Alone... (Solo Piano and Voice by Prince)

One Nite Alone... (Solo Piano and Voice by Prince)

 

当初ファンクラブ限定で『One Nite Alone...Live!』と同時期に発売されたアルバム。そしてなんとこれが全編プリンスによるピアノオンリーの演奏となっている。うーんでもオレ、殿下のピアノ弾き語りはなぜかどうも好きくない。

2002年:One Nite Alone... The Aftershow: It Ain't Over! (Up Late with Prince & The NPG) (Live)

One Nite Alone... The Aftershow: It Ain't Over! (Up Late with Prince & The NPG) (Live)

One Nite Alone... The Aftershow: It Ain't Over! (Up Late with Prince & The NPG) (Live)

 

当初フィジカル3枚組だった『One Nite Alone...Live!』の、CD3のみの音源を収めた配信音源。ただしこちらは『The Aftershow』と名付けられているようにライヴ後のアフターパーティーを収録したもの。こちらのほうがリラックスした演奏かも。

2003年: Xpectation

Xpectation

Xpectation

 

なんとプリンスのヴォーカル無し・インストオンリーのアルバム。殿下のヴォーカルがないとつまんないんじゃあ?と思ったらこれが大間違い、インストのみなのにプリンス・サウンドであることが如実に伝わってくるからアラ不思議。全体的にセッション的な印象だが、力み過ぎた『The Rainbow Children』なんかよりも面白いと思うぞコレ。

2003年: N.E.W.S

N.E.W.S

N.E.W.S

 

こちらもインストオンリーのアルバム。1曲ぴったり14分で4曲、『Xpectation』と同じくセッション的内容だが、14分という時間の中で変幻してゆく音の流れと緊張感はまた別個の印象を受ける。プリンスの作ったアンビエントサウンド・アルバムと思って聴くと結構悪くない。

2004年: Musicology

Musicology

Musicology

 

レーベル移籍後のゴタゴタと漂泊を経て、趣向を変えたジャズアルバムや好き勝手なインストアルバムを作り、気持ちの整理が付いたのかメジャー5年振りとなる心機一転作は清々しいまでに原点回帰のポップ・ファンク作品。とはいえこの作品辺りから昔の毒気が抜けて”コントロールされた大人なプリンス”を聴くことが出来る。第2期プリンス黄金時代の胎動である。

2004年: The Chocolate Invasion

The Chocolate Invasion (Trax From The NPG Music Club Volume One)

The Chocolate Invasion (Trax From The NPG Music Club Volume One)

 

2004年にプリンスのWebサイトNPG Music Clubにおいて配信オンリーで発売されたアルバム。プリンス自身がアルバム流通の在り方を模索していた時期だったのらしい。そしてこれが結構聴き易く親しみ易いポップ・ファンク集で、例によって寄せ集めとは言え決して無視できない完成度を誇っている。肩の力の抜け方が程よいのだ。

2004年: The Slaughterhouse

The Slaughterhouse (Trax from the NPG Music Club Volume 2)

The Slaughterhouse (Trax from the NPG Music Club Volume 2)

 

『The Chocolate Invasion』と同時期に発売されたこれも配信オンリーの作品。『The Chocolate Invasion』同様知名度が限りなく低いアルバムだが、これがなんと結構出来がいい。やはり聴き易く親しみ易いポップ・ファンク集ではあるが、こちらはよりアグレッシヴで、歯応えといった点ではこの『The Slaughterhouse』のほうが上か。

2004年: C-Note

C-Note - Live

C-Note - Live

 

これもまたNPG Music Clubによる配信オンリーだったアルバム。ライヴではあるが全5曲34分という中途半端なもので、さらにヴォーカルは殆ど入っていない(ラストで1曲未発表曲を歌っている)。どうもリハーサル/サウンドチェック中の音源なのらしい。 日本におけるライヴでの音源も収録されている。

2006年: 3121

3121

3121

 

オフィシャルでは『Musicology』の次にリリースされたアルバムで、事実上のカムバックアルバムとして位置づけられている作品。大々的に宣伝され売り上げも高く、それまで暫くプリンス作品を聴いていなかったオレが「あれ?プリンス復活?」と思いつつ購入したことを覚えている。作品的にも『Musicology』の”コントロールされた大人なプリンス”をさらに押し進め輪郭のはっきりした粒揃いの曲が並んでいる。

2007年: Planet Earth

PLANET EARTH

PLANET EARTH

 

かつての毒気もすっかりと抜け”コントロールされた大人なプリンス”として歩み始めた殿下が遂に地球環境にまで憂慮してみせる、というかつてのレロレロ路線からは考えられないような落ち着きに満ちたアルバム。なにか宗教的転向もあったのらしい。安定した音は第2期黄金時代をひた進む殿下の余裕の表れなのだ。

2008年: Indigo Nights

Indigo Nights / Live Sessions

Indigo Nights / Live Sessions

 

2002年の『One Nite Alone...Live!』以来となるライヴ・アルバム。当初プリンスのライブ写真集の付録として付けられたものらしい。「とりあえず溜め込んだものは全部出したれや!」と言わんばかりにヴォリュームたっぷりだった『One Nite Alone...Live!』と比べれば大分整理され把握しやすい。そして音的にはやはり大人のプリンスなんだよなー。

2009年:LotusFlow3r 

Lotusflow3r

Lotusflow3r

 

 2009年: MPLSound

Mplsound

Mplsound

 

当初通販専用ということで『LotusFlow3r』『MPLSound』さらにプリンス・プロデュースによるBria Valenteという女性アーチストのアルバム『Elixer』の3枚組で発売されたアルバム(配信ではバラ売り、ただし『Elixer』の配信は無し)。当時オレも「3枚組!」ということで興奮気味に購入した覚えがある。音的には『Musicology』から『Planet Earth』までのアダルト路線に飽きてきた殿下が「また違う事やってみよう」と路線を変えてみた作品で、まず『LotusFlow3r』は殿下のギターが大々的にフィーチャーされたアルバム、『MPLSound』は「久しぶりにファンキーしまくるかあ」とゴリゴリしまくったアルバムということになる。いやしかし殿下ってやっぱり落ち着き無いわ……。

2010年: 20Ten

20Ten

20Ten

 

プリンスが新聞・雑誌の付録としてリリース、一般のファンの手にはなかなか入らなかったので中古価格が高騰しまくったというアルバムだが、実際聴いてみると付録レベルで気楽に作った作品で、それほど高く評価するほどのものでもない。現在は配信音源で聴ける。 

◎2014年~

2014年: Art Official Age

Art Official Age

Art Official Age

 

ようやく手にした”落ち着いた大人なプリンス”路線も捨て雑誌付録や通販でまたぞろゴニョゴニョしてようやく気が済んだのか、「また頑張って売れるアルバム作るぞお」 とアーチスト人生何度目かの心機一転で作り上げた快作。本当にこの人は自分に安住せずどんどん自分を更新してゆく人なんだなあ。このアルバムでは以前のレロレロなスケベさが戻ってきていてより老獪かつ黒光りしたプリンス・サウンドを堪能できる。

2014年: Plectrumelectrum

プレクトラムエレクトラム

プレクトラムエレクトラム

 

『Art Official Age』と同時発売されたアルバムで、サードアイガールという女性ロックバンドとプリンスが共演した作品。これが重いドラムとラウドなギターが唸るバリバリの爽快ハードロック路線で(そうじゃない曲もあるが)、 ははあん、さては殿下このアルバムで若い娘たちの精気を吸ってレロレロでスケベな『Art Official Age』を作り上げたんだな、と邪推してしまうことも可能。

2015年: HITnRUN Phase One

Hitnrun Phase One

Hitnrun Phase One

 

プリンスお蔵出し推進計画第1弾。今までのお蔵出しと違うのは「とりあえずアルバムのトータリティーとか考えずに作った曲はガンガン出しちゃうよ」ということなのらしい。しかしアルバム1枚聴いてみると今日的にアップデートした楽曲の数々はトータリティーがどうというよりもプロデュースの統一感が勝っていて逆にバラエティ豊かで楽しい作品じゃないか、と思わせてくれた。特にEDMに限りなく接近した曲の数々はEDM好きのオレとしては大興奮して聴いたよ。考えるな!曲を出し続けろ!というのが「ヒットエンドラン」の意味だったのかな。 

2015年: HITnRUN Phase Two

HITNRUN PHASE TWO

HITNRUN PHASE TWO

 

プリンス生前最後のアルバムはプリンスお蔵出し推進計画第2弾。『Phase One』よりも録音年代がバラけてるらしいがそんなの気にしない、だって1曲目、オレがプリンス晩年における最高の曲だと思っている『Baltimore』がジャーンと流れてきたときアルバムのトーンがそこに統一されるからだ、だから後は一気呵成なんだ、プリンスはどんどん突っ走るんだ、どんどん新しい音を追い求めるんだ、そして星の彼方へと旅立ってしまったけどね。あとこのアルバム、異様に音がいいと思うんだが気のせいかな。殿下の号令で最新録音テクノロジーを駆使したんじゃないか、と知らんくせに勝手に思ってるんだが。 それにしてどの曲も明るくて軽快で素晴らしい。いろいろ評価はあると思うがオレの中ではプリンス作品の中でも相当にお気に入りの1枚だ。

2018年:Piano & a Microphone 1983

Piano & A Microphone 1983 [Deluxe Edition] (CD+LP)

Piano & A Microphone 1983 [Deluxe Edition] (CD+LP)

 

 プリンスの死後リリースされたピアノ弾き語り音源。レコーディングが1983年ということなんだが、殿下にしちゃあ淡白すぎて肩透かしだったかな。 

2019年:Originals 

プリンスが他のアーチストに提供した曲の、プリンス自身が歌ったオリジナル・ヴァージョンを集めたもの。提供されたアーチストに曲調を合わせているためにプリンスが歌うと逆にしっくりこない気がした。こちらもプリンス死後にリリース。

◎その他

1995年:Exodus/The New Power Generation

Exodus by New Power Generation

Exodus by New Power Generation

 

The New Power Generationの単独アルバムだがプリンスがトラ・トラという変名でベース弾いたりヴォーカルやったり叫び声を上げたりしている。クレジットに無いが曲も結構手掛けているんじゃないのかな?プリンス・アルバムとして聴いても遜色なく聴けてしまう。1995年は殿下が変名騒ぎとかで錯綜し出す時期。

1998年:Newpower Soul/The New Power Generation

Newpower Soul

Newpower Soul

  • アーティスト:Prince
  • 出版社/メーカー: Npg Records
  • 発売日: 1998/06/30
  • メディア: CD
 

こちらもThe New Power Generation名義のアルバムだが、なにしろジャケットははっきり殿下だし、クレジットにも殿下の名前がきっちり入っている。これもプリンス・アルバムとして遜色なく聴けるし、結構いい曲も多いんだよね。1998年といえばレーベルとのトラブルが既に終わっていた時期だったが、あれやこれやと疲弊していて自分の名前と関係ない所で伸び伸びとパフォーマンスしたかったのかもしれない。