■イコライザー2 (監督:アントワン・フークア 2018年アメリカ映画)
デンゼル・ワシントン主演による「DIY必殺仕置人」映画第2弾である。最初に書いておくが記事タイトルは単にダジャレが言いたかっただけのものであり深い意味も浅い意味もとりあえず意味は全くない。なあにいつものことさ。
なぜ主人公が「DIY必殺仕置人」かというと武器携帯無しに「その辺にあるもの」を的確に利用して殺傷武器に替え敵を殲滅するスキルを持った元CIAエージェントが主人公だからである。1作目は劇場公開を見逃しソフトが出てから視聴したのだが評判通りたいそう面白い作品だった記憶がある。
で、この2作目だが、退役CIAエージェントである主人公ロバート・マッコールが元上司の謎の死を知り、事件を追及するうちに自らも命を狙われる事になる、という物語である。まあなにしろ主人公は天下無敵の仕置人なので前作同様快刀乱麻に敵を血の海に沈めるであろう事は見るまでもなく明らかであるし、その奇想天外なぶっ殺しぶりをぐへへぐははと楽しめれば事足りる映画であることはある。物語それ自体は「諜報機関内で進行する権謀術策」というこのテのアクション・スリラーではお馴染みというかありふれたというか手垢塗れまくりのものに過ぎないので、映画のお楽しみの中心はなにしろ愉快痛快なぶっ殺し方の在り方へとシフトせざるを得ないのだ。
物語半ばまでは本筋とは離れてタクシーの運ちゃんとして日々平々凡々として過ごす主人公がすわ悪事と見ればバットマンの如きダークな一人自警団と化しクソ野郎どもに天誅を打ち据える場面なども描かれるが、基本的に正義とか悪とかカッタリー人間でしかないモラル性ゼロのオレとしてはこの辺りの流れは若干退屈して観てしまった事は否めない。悪くはないんだが、この程度ならソフトが出てから家でビールでも飲みつつダラダラ観てたほうが楽しめるんだがな、と思えたぐらいだ。
とはいえこの2作目には、それだけに留まらない奇妙な詩情とそれを生み出すことになるドラマの存在がある。それは近所に住む黒人青年マイルズと主人公との心の交流である。美術の才能がありながらギャング団に足を踏み入れそうになるマイルズをロバートは叱咤し、真っ当な道を歩む為の道しるべを差し出そうとする。これ自体も黒人コミューン内における成人と青年のドラマとしてありていのものであると言えば言えるのだが、逆にこのようなドラマを人気シリーズの第2弾の物語に挿入してきたことに自らもアフリカ系である監督アントワン・フークアの個人的内面とそれが併せ持つ詩情をなぜか感じてしまったのだ。浮いているわけではないし、ロバートとマイルズとのこの交流が後に危機を生み出すことにはなるのだが、ここだけ抜き出して別の物語にしても充分通用するような豊かな物語性を感じたのだ。
同時に、今作はやはり何故か奇妙にロケーションの美しさを感じた。それは海辺の光景のような自然の美しさだけではなく、主人公の住む街の街並み、彼の住むアパートのブロック塀にまつわるある風景、主人公の部屋のリアルな質素さ、さらにはクライマックスとなるあのロケーションとシチュエーションの光景の、荒々しさと侘しさを同時に併せ持つ様など、どれも瑞々しさとささやかな生活感とを感じるのだ。特に書店のシーンなど、本筋とはあまり関係無いのにもかかわらず妙に記憶に残るのだ。オレはアントワン・フークア監督作品の熱心なファンではないので判らないのだが、この人は意外とこういった豊かな映像性を持ち合わせた監督なのかな、とちと思った。
そういった部分で、アクション・スリラーとして前作を超えたとか超えて無いとかいうことは別として、本筋とは関係ない部分で個人的な面白さを感じた作品だった。ところで主人公は読書好きという設定であれこれ本を読んでいたのだが、あっちの国ではプルーストの『失われた時を求めて』がハードカバー本1冊に納まっちゃうものなのか?
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