■Chef (監督:ラージャー・クリシュナ・メーノーン 2017年インド映画)
傲慢すぎて馘になった一流シェフが、心機一転移動レストランを始めちゃう!という物語です。主演を務めるのはサイフ・アリー・カーンですが、サイフのシェフ姿ってなんだか新鮮そうですね。監督は『エアリフト 〜緊急空輸〜(原題:AIRLIFT)』のラージャー・クリシュナ・メーノーン。またこの作品は『アイアンマン』などで知られるハリウッド監督、ジョン・ファヴローが2014年に監督した『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』のインド版リメイクとして製作されています。
物語の舞台はまずはニューヨーク。この街の一流レストランでシェフを務めるローシャン(サイフ・アリー・カーン)は、客とイザコザを起こし店を馘になってしまいます。がっくり肩を落としつつ、彼はいい機会だからとインドに住む元妻と息子に会いに向かいます。久しぶりに会う息子との心休まる日々。そしてそこで彼は元妻と懇意の実業家から古びた二階建てバスを見せられ、移動レストランをやってみないかと勧めらます。最初は一流シェフだったプライドが許さなかったローシャンでしたが、次第にそのアイディアに興味を持ち始めます。
オリジナルであるファヴロー版は数年前観ていましたが、物語のアウトラインは殆ど同じなのにもかかわらず、アメリカとインドという舞台の違いからとても新鮮な気持ちで観る事が出来ました。
ファヴロー版ではロサンゼルスから物語が始まり、マイアミでキューバサンドイッチの販売を思いつく……という物語でしたが、この『Chef』ではニューヨークを発端にしつつ、主人公は元妻と息子の住むインド・ケーララ州のコチに飛び、そこから主人公の生まれ故郷であるニューデリーへ移動レストランの車を走らせるんですね。その途中ゴアに立ち寄りパーティーピープルとセッションを楽しんだりもします。この、南インドの風光明媚な土地柄と、インド大都市の喧騒の間を行き来するロードムービー的な描写が非常に活きてるんですよ。
こうして遷り変る風景の中で、最初は傲慢で頑固者だった主人公は自分を見つめ直すようになり、「料理を作るってどういうことなのだろう?」と自らに問いかけます。さらにそれまで疎遠だった息子との心の交流をも深めてゆくのです。また、かつてのニューヨークの同僚が助っ人で移動レストランに参加し、真に信頼できる人間関係とは何なのか主人公は思い知らされます。こうして、主人公は自らの「本当に大切なもの」を発見し、それを取り戻してゆくのがこの物語なんですね。こういった全体的に非常に強いポジティビティがこの物語をとても魅力的なものにしています。
惜しむらくは舞台となるケーララやニューデリーなどインドの料理がもっとたくさん紹介されて見た目的に「美味しい」作品なのを期待したんですが、その辺は割とあっさり目だったのがちょっと残念でしたね。まあインドの観客が自分の国の料理を改めて紹介されてもそれほど面白くも無いからだったんでしょうかね。どちらにしろ主演のサイフ・アリ・カーンは自らの役どころをしっかり把握した演技で実に好演でした。予定調和的ではありますが観て損の無い佳作だと思いますよ。
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