オレはまだ本当のモフを知らない / 映画『パディントン2』

パディントン2 (監督:ポール・キング 2017年イギリス/フランス映画)

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モフモフとフカフカの世界

オレの相方はモフモフフカフカしたものが好きである。モフモフした動物。フカフカした毛布。毛並みがふわっと柔らかいもののことだけではなく、手触りが優しいものもこの範疇に入るのらしい。

相方と付き合い始めの頃、この「モフモフフカフカへの愛着」というのがまるで分らなかった。理解できないのではなく、それまで意識したことがまるでなかったのでピンとこなかったのだ。昔のオレは動物を愛でるなんてことはなかったし、だから毛並みのよい小動物を撫でてその感触を楽しむなんてしたことがなかった。

カフカした毛布やフカフカの布団やタオルなんてものにも別段好みは無かった。そりゃあ柔らかいことにこしたことはないが、毛布や布団は保温できればいいしタオルは顔や体が拭ければそれでよかった。洗濯で柔軟剤なんて使う必要も感じなかった。要するに「肌触り」というものに鈍感というかそこに意識が無いのだ。

だからモフモフの動物やフカフカの布団やタオルに目の色を変える相方の事が最初よく分からなかった。だが付き合いも長くなるとすっかり感化されて、相方と一緒に動物園に行っては動物をモフモフとモフりまくっているオレである。引っ越しした時も「クッションか座布団を買うべきだ」と言われ、実際買ってみると確かに居心地がいいのが分かった。

モフへの遠い道

ところでオレは相方から「クマ」という愛称で呼ばれている。クマのように狂暴だったり毛むくじゃらだったりするからではない。クマのようにドテッとしているからなのだそうだ。そしてたまにオレの脇腹の脂肪をつまんで「モフッ」とか言っている。クマであるオレを一匹の動物として愛でてくれているのかもしれない。それとも脂肪の多さをからかっているだけなのかもしれない。きっと両方だろう。

そんなモフモフのクマの子供が主人公の映画が『パディントン』だ。児童文学が原作なのらしいが、映画では非常に細かな毛並みを持ったCGの子熊が登場し、実写の人間たちとからんでゆくのだ。

パディントン』の1作目は日本では2016年の1月に公開されて、興味はあったのだが忙しくて観に行けなかった。その後ブルーレイを購入し、相方と一緒に観た。これはとっても傑作で、劇場で観とけばよかったな、とちょっと後悔した。主人公となるクマのパディントンはちょっとおっちょこちょいで変な所で格式張っていて、そしてとても愛すべきキャラだった。コロコロした体形やモフモフした毛並みも可愛らしかった。

こんなクマのパディントン、当然相方のお気に召しただろうと思い、観終った後「モフモフで可愛かったね!」と聞いてみたら、いや、あれはちょっと違うと言う。クマのパディントンはモフモフではないと言うのだ。この後特に突っ込んで聞かなかったけれども、相方の中では幾ら毛並みが豊かだろうとモフモフとモフモフでないものがあり、そしてパディントンはモフモフではない部類に入ってしまうらしいのだ。

オレにはその線引きがよく分からなかったが、これは常にモフを意識し生活の中でモフを追及してきた相方ならではの明哲な論理がその中にあるのだろう。そしてモフに関してはまだまだひよっ子であるオレはその領域に達しておらず、だから相方の意見がよく分からなかったのだろう。即ち真のモフへの道はまだまだ遠く、オレはまだ本当のモフを知らない、ということなのだろう。

パディントン2

さてそんな『パディントン』の続編が公開された。そして今度こそは劇場で観た(吹き替えだった)。周りはほとんど親子連れや子供たちばかりで、カップルがちょろちょろ、50過ぎのオッサンはオレぐらいなものだったが、構いはしない、オレはクマのパディントンが好きなのだ。映画館ではパディントンのぬいぐるみ人形まで買っちゃったよ。これは部屋に飾るんだ。

映画は例によっておっちょこちょいのパディントンが登場し、今作ではあらんことか窃盗犯に間違われて刑務所に入れられてしまう。そしてパディントンがロンドンで世話になっているブラウン家の人々がその真犯人を追う、という物語になっている。真の窃盗犯は財宝の在り処が秘められた飛び出す絵本を盗んだのだが、これにはロンドンの名所が描かれていて、その絵本の中のロンドンをパディントンとクマのルーシー叔母さんが散策するファンタジックなシーンにはひたすらうっとりさせられてしまった。オレは実はこういうのにとっても弱いのだ。

真犯人を追うブラウン家のパートは、ブラウン家の人々が少々風変わりな事もあってとてもコミカル。オレはブラウン家のお父さん役ヒュー・ボネビルがとてもお気に入りで、これはオレが大ファンだったTVドラマ『ダウントン・アビー』の当主役をこのヒュー・ボネビルが演じていたからなのだが、この人が画面に出てくるだけでなんだか安心してしまう。また、ロンドンの街並みがとても美しく描かれていてこれにも心奪われた。

しかしやはり楽しいのはパディントンの活躍する刑務所パートだ。そもそも子供たちが多く見るだろうドラマで主人公が刑務所なんていうのも随分思い切ったことのように思えるが、殺伐とした刑務所の受刑者たちがパディントンの登場で明るく楽しくファンシーに様変わりしてしまうのだから驚きだ。やはりコグマ効果と言わざるを得ない。ここでのエピソードの組み立て方がとても巧くて見せるものになっている。クライマックスにはアクションも挿入され、これも実に小気味いい。

そんな訳でストレートな物語展開から1作目以上に楽しかった『パディントン2』だった。この調子で3作目4作目と行けるんじゃないか。それまでオレは相方の理想とする真のモフを探求しながら、新作公開を待つことにしよう。

( ↓ 劇場で購入したパディントン人形)

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映画『パディントン2』予告篇 

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クマのパディントン

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