■Akira (監督:A・R・ムルガードース 2016年インド映画)
■女ダバング・ソーナークシー・シンハー!?
西暦20XX年。オリンピック開催の為再開発の行われていたネオ・ニューデリーを巨大な光球が覆う。圧倒的な破壊力を秘めたその光球の中でネオ・ニューデリーは壊滅した。そう、AKIRAが目覚めたのである。大友〇洋原作、A・R・ムルガードース監督によるSFインド映画『AKIRA』の始まりなんだッ!?……というのは全くの大嘘で、ソーナークシー・シンハー主演による2016年公開の映画『Akira』でゴザイマス。えー、Akiraっちゅうのは主人公女性の名前で、「アキラ」というよか「アキーラ」という発音でしょうかね。「シャキーラ」みたいなもんだと思ってもらえればよろし。
さてこの『Akira』、先程も書きましたがインド女優ソーナークシー・シンハーの主演によるアクション映画なんですよ。ソーナークシー・シンハー。例によって美人ちゃんです。ぽっちゃり美人です。アーモンド形の瞳が魅力的です。デビュー作はなんとあのベルトクイクイ親父の主演した『ダバング 大胆不敵』(2010)です。その後も『Action Jackson』(2014)、『Tevar』(2015)とアクション作品に多く出演されていますが、今回は本人自ら体を張ってのアクション作となるのですよ!『ダバング』でデビューし遂に自らも「女ダバング」に!?やっぱりベルトクイクイなさるのかしらん!?いやもっと別の部分でクイクイが!?いやこれは目が離せませんね!
監督のA・R・ムルガードースは『pk』のアーミル・カーンが復讐鬼を演じる大傑作『Ghajini』(2008)やアクシャイおじさんがハードなアクションを見せる『Holiday: A Soldier Is Never Off Duty』(2014)なんてェ作品を監督しています。そして!なんとこの作品、ついこの間IFFJで公開された大傑作『ボンベイ・ベルベット』(2015)や、『Ugly』 (2014)、『Raman Raghav 2.0』(2016)なんてェ作品を監督しているインド映画界の鬼才中の鬼才、アヌラーグ・カシュヤプ監督が超クソ野郎のいやらしい悪党を演じているのも見所なんですよ!いやーアヌラーグ監督、以前拙ブログの記事本日開催!インド映画祭IFFJ上映作品はこんな監督が撮っている! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミで「オヤジの中のオヤジ」と評したこともあるぶっとくて油ギッシュで黒々としたオヤジなんですね!いやこれは楽しみだわ!
■おおっとびっくりダーク展開!
前置きが長すぎましたが物語を紹介しましょう。主人公の名はアキーラ(ソーナークシー・シンハー)、彼女は幼い頃のある事件をきっかけに格闘技を学び、その技によりチンピラどもを叩きのめしたことで少年院に入れられます。成長した彼女はミッションスクールに学びますが、生真面目な彼女に絡んできた不良連中をまたもやぶちのめしてしまいます。一方、警察官であるにもかかわらず愚劣な行為を繰り返す男ACP(アヌラーグ・カシュヤプ)は交通事故車のトランクの中に大金を見つけ、まだ生きていた運転者を殺して金を奪います。しかしその行為を情婦にほのめかしていた場面をビデオに撮られ、しかもそのビデオカメラは置き引きに遭ってしまいます。置き引きをしたのはミッションスクールの学生であることを突き止めたACPはビデオカメラを取り戻そうと、誤ってアキーラを拉致してしまうのです。
とまあこんなザックリとした粗筋だけだと「この後アキーラが悪玉相手にアクションに次ぐアクションを展開してゆくのだな」と思わされ、確かに冒頭ではアキーラの「いよう、待ってました!女ダバング!」と掛け声掛けたくなるような強烈な格闘シーンこそ描かれますが、その後は結構なダーク展開に足を踏み入れてゆくんですね。なんとアキーラは証拠隠滅の為ACPに精神病院に入れられ、そこで鎮静剤打ちまくられの半ば廃人状態となってしまうんです!しかしアキーラが孤立無援という訳ではありません。女性警察官ラヴィヤ(コーンコーナー・セーン・シャルマー)は異様な事件が進行していることを察知し捜査に乗り出していたんですね。
■様々な映画のオマージュ
この女性警察官ラヴィヤ、物語内容と何も関係ないのにお腹の大きな妊娠中の女性として登場するのが面白いんですね。「妊娠中の女性」というとヴィディヤー・バーラン主演によるインド産傑作ミステリー映画『女神は二度微笑む』を思い起こしますが、実はこの映画ではなく、コーエン兄弟制作のサスペンス映画『ファーゴ』(1996)へのオマージュなんじゃないかなと思います。『ファーゴ』では妊娠中の女性署長が殺人事件の捜査に乗り出すんです。
一方、証拠隠滅の為鎮静剤を打ちまくられ廃人状態の主人公、というのは、ジョン・フランケンハイマー監督による1975年公開のアクション映画『フレンチ・コネクション2』ではないでしょうか。この作品では麻薬捜査官が麻薬組織に拉致され麻薬漬けになってしまう姿が描かれます。さらにこの『Akira』、クライマックスの展開がなんと『ダークナイト』なんですよ!そう、クリストファー・ノーラン監督により2008年に公開されたバットマン映画、アメコミ映画作品の一つの金字塔とも言える作品『ダークナイト』なんですね。クライマックスなのでどの辺が『ダークナイト』なのかは明かせませんが、正義というものの苦さがこの『Akira』では描かれているんですよ。
痛快アクションではなくダークな物語展開には『Ghajini』を監督したムルガードース作品らしさを感じますが、この作品でいわばダーティーな役柄を演じたソーナクシーは、単なる「カワイコちゃん女優」を演じるだけではない演技の幅の広さを感じさせられました。そしてやはり、肥溜めの蛆虫みたいなクソ野郎を堂々と演じ切ったアヌラーグ・カシュヤプ監督!ドロドロとした作風の多いカシュヤプ監督と全く印象の違わないドロドロぶりでしたよ!この辺のルサンチマンの発露というのは、自らの撮るヤクザ映画でヤクザ役が嘘みたいに板に付いている北野武監督と同様のものがあるんじゃないかかな、と感じました。
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