■Paheli (監督:アモル・パレカール 2005年インド映画)
最近よくインド映画を観ているんですが、たいした知識も無いので「とりあえず新し目の作品」ということで選んで観ていたんですね。それらの作品は新しいだけあって、それまで漠然と持っていたインド映画のイメージをことごとく覆す作品ばかりで、非常に驚いたし新鮮でした。ただ、本数をこなしていくうちに、最新型じゃなくていいからオーソドクスな、というかステレオタイプなインドのイメージの作品も観てみたいなあ、なーんて思ってくるわけなんですよ。どんなのかというとターバン巻いた男性とサリー着た女性が出てきて宮殿であれやこれやするお話、ということなんですが(想像力貧困すぎてスイマセン…)。ただ調べるとそういう作品は重厚そうな歴史ものになっちゃうので、もっと軽く観られるのはないかなあ、と思って観てみたのが2005年作、『Paheli』なんですが。
昔々、インドのある所に、結婚式を挙げたばかりの夫婦がおったのですな。奥様の名前はラッチー(ラニー・ムカルジー)、旦那様の名前はキシャン(シャー・ルク・カーン)。このキシャン、豪商の息子なのですが、商売の事で頭がいっぱいで、結婚早々ラッチーを置いて5年の旅に出てしまうんです。悲しみに暮れるラッチー。しかしそのラッチーの前に、旅立った筈のキシャンが現れるのです。ラッチーは歓びに沸きますが、同時に不思議に思います。実はこのキシャンは本当のキシャンではありませんでした。ラッチーに恋した精霊が、キシャンの姿を借りて現れたものだったのです。しかしその真実を知ってもラッチーは精霊のキシャンを愛することに決めました。二人は子供までもうけて幸せに暮らしていました。しかしある日その二人の前に、本物のキシャンが姿をあらわしたのです。
インドの古い時代を舞台に、人間の姿を借りた精霊と娘の愛を描くこの物語、しっかりとお伽噺の世界です。ロケ―ションも雰囲気たっぷり、衣装もきらびやか、ラニー・ムカルジーは美しいサリーを着ているしシャー・ルク・カーンもターバンぽい何かを被ってましたので当初の予定通りです。そもそも「人間の姿を借りた人間以外の存在」と人間との結婚、いわゆる異類婚姻譚というのは世界中に存在するフォークロアで、ギリシャ神話のキューピッドとプシケー、ドイツの水の精ウンディーネ、フランス伝承のメリュジーヌ、日本では鶴の恩返しなんてのもお馴染みですね。『Paheli』の精霊は井戸から現われましたが、いろんな姿に変身できるばかりか、魔法を使うことも出来るんです。映画では派手さは無いにしろVFXを使ってしっかりその辺を描いていて楽しませます。
しかしこの物語内容で141分はなんだか間延びした印象があります。物語の殆どは精霊キシャンとラッチーとの愛に満ちた日々を描きますが、ちょっと退屈なんです。そして盛り上がるのは後半、本物のキシャンが現れてからなんですね。この本物キシャン、最初は情の薄いヤツのように描かれますが、実は男女の愛にちょっと疎かっただけで、旅先でラッチーのことを思い出して恋しくなっちゃったりしてるんですね。しかしそんなラッチーは既に精霊に寝取られてたんですね!まあしかしラッチーにとっては自分をほっぽらかしにする本物の人間よりも愛してくれる精霊のほうが大切な訳なんですよ。この辺「女はほっぽらかしかしちゃいけない!」という良い教訓ですね。そしてクライマックスは「どっちが本物対決」が待ち構えているんですが、ここももうちょっと盛り上げてほしかったな。でもまあ、シャー・ルク・カーンが出ているからいっか、てな感じで観終わりましたね。