■Zindagi Na Milegi Dobara (監督:ゾーヤー・アクタル 2011年インド映画)
友人同士である3人のインド人男性が、共にスペインを旅しながら自らの人生を見つめ直す、といった物語だ。タイトル『Zindagi Na Milegi Dobara』は「人生は2度無い」という意味。
スペインを旅行する3人の男はカビール(アバイ・デーオール)、イムラーン(ファルハーン・アクタル)、アルジュン(リティック・ローシャン)。深い友情で結ばれた3人だったが、この中の1人カビールの結婚が決まり、3人揃って旅行が出来るのはもう難しいだろうから、ということでこの旅行は計画された。彼らは車に乗り、数週間スペインを見て回ることになっていた。風光明媚なスペインの光景、旅先で待つ様々な体験、そして美しい女性との出会い。それらは忙しい日常の中で見失っていた多くの物事を、3人の心に呼び覚ました。しかし、独身最後の旅行なのに、カビールの婚約者ナターシャ(カルキ・コチェリン)が途中から合流したいと言い出し、微妙な空気が流れ始める。
平たく言ってしまえば、そのまんま、観光映画である。主人公3人はスペインにやってきて、様々な観光体験をする。ダイビングで海の美しさを実感し、インストラクターの女性レイラ(カトリーナ・カイフ)とアルジュンが恋に落ちる。スカイダイビングで命懸けの痛快さを味わう。さらに大量のトマトを投げ合うトマト祭りのトマティーナ、牛追い祭りで知られるサン・フェルミン祭りを体験する。オープンカーで旅を続け、スペインの空気を胸いっぱいに味わう3人。宿泊は清潔で落ち着いた瀟洒な宿。そういった中で起こるドラマも、ちょっとした衝突や出会いや別れ、悪戯が過ぎて警察のお世話になったりなど、殆ど想像のつくようなことばかりで、何か突飛な事件が巻き起こる、ということはない。殆どの場面は、出演者が「観光旅行楽しいー!」とやっているだけだ。
旅行好きとかスペイン好きとかならまだしも、こんなありがちともいえる観光ドラマが楽しいのか?と思われるかもしれないが、オレは結構楽しんで観ていた。確かに物語はオーソドクス過ぎるぐらいオーソドクスだが、退屈することが無いのだ。これは主演の3人の抜群に息の合った演技が功を奏しているからなのかもしれない。3人のキャラクターはそれぞれ魅力的だし、彼らの背負った人生と、それが旅を通してどう変わっていくのかも、とても丁寧に描かれていた、というのもあるだろう。総じて、実に手堅く誠実なドラマ作りが成されていた。一歩間違えると嫌味になってしまう題材を上手く料理していたと思う。もちろん、美しく撮影されたスペインのそこここの光景が実に魅力的に映えていたということも忘れてはならないだろう。強烈に惹き付けるものはないにせよ、端正な作りが好印象な作品だったということができるだろう。
また、ほぼ全編スペイン・ロケということで、ロケーション的にはインド映画臭さを匂わせるものは皆無なのにもかかわらず、結婚を巡るストーリーであること、友情についての物語であること、そういった点においてスペインが舞台でもインド映画らしさがぷんぷんしている、といった部分が面白かった。個人的には『Agneepath』で強烈な存在感をアピールしていたリティック・ローシャンを再び画面で観ることが出来たのが嬉しかった。意外とこの俳優好きかな。カトリーナ・カイフは現代的な美人女優だが、カジュアルな雰囲気がとてもいい。ただ、カルキ・コチェリンだけはどうも苦手で、『Yeh Jawaani Hai Deewani』にも出演していたが、その時も画面に妙な違和感を抱きながら見てしまっていた。