■レッドスーツ / ジョン・スコルジー
銀河連邦の新任少尉ダールは、憧れの宇宙艦隊の旗艦イントレピッド号に配属される。未知なる宇宙への冒険の旅のはじまりだ。しかし、彼と新人仲間はすぐに艦で奇妙なことが起きていると気づく。任務でのクルーの死亡率が異常に高いのに、艦長たち上級士官はまるで死なず、緊急時には謎の装置に頼って問題を解決しているのだ。この世界では何が起こっているのか?自分たちの命がなにものかに操られていると疑い、イントレピッド号の謎を解こうとするダールたちは、やがてとんでもない真実と直面することになる…。アメリカSF界屈指の人気作家による、宇宙冒険ユーモアSF。
絶好調『老人と宇宙(そら)』シリーズのジョン・スコルジーが書いた新作SF長編と聞いちゃあそりゃ読まなアカン、と早速手に取った『レッドスーツ』です。
お話はスコルジーらしいコミカルな調子で進んでいきます。主人公は宇宙艦隊に配属された新人クルーたち。彼らは配属早々、この艦隊がなーんだか妙なことに気づきます。まず任務でのクルーの死亡率がやたらめったら高い。でも艦長や上級士官はなぜだか全然死なない。緊急時にはインチキ臭い謎の装置に問題を突っ込めばたちまち解決。なんなのこれ?と先輩クルーに話を聞こうにもみんななんだか気まずそうにするだけ。そして主人公らは徐々に、この艦隊と、そして自分たちの運命が「普通に考えたら有り得ないある法則」に支配されていることを知ることになるのです。「この"法則"通りだと俺らも今までのクルーと同じくあっさり死んじゃうことになっちゃうじゃん!?」かくして主人公たちの七転八倒の悪あがきが始まる!?というもの。
この"ある法則"がいったいなんなのかがこの物語のキモとなりますが、ネタバレになっちゃうので特に書きません。読んでいれば「これって実はこういうことなんじゃないの?」とすぐに予想がつくことでしょう。分かってみると「ぐはは、なんじゃそりゃ」って話なんですけどね。そして中盤はこの"ある法則"に翻弄される主人公らが、それをどう回避し消滅させることが出来るか、という所に焦点が合わせられてゆきます。そして思いついた方法というのが、科学考証もへったくれもないインチキな世界を逆手に取ったインチキ極まりない方法で、真面目なSFだと思っちゃうとメチャクチャな話なんですが、「ここって荒唐無稽なSF世界だし!」と既にみんな納得ずくだから出来てしまう、というアクロバティックな展開を見せるんですね。
そしてあんなことやこんなことがあり、クライマックスでは「なーるほど、こういう着地点になるのか!」と頷かされますが、ここまでだと「うん、面白く出来てたし、楽しめたよ、いい作品だったね」とまあまあ冷静に感想が言えるんです。
しかーし!実はここで終わりじゃない!ここからさらに二転三転おまけに四転と、物語は凄まじいひねりを見せるんです!そしてラストに待つのは、これまでのスラップスティックなドタバタストーリーからは想像もつかない、両手いっぱいの愛の花束とでも言い表したくなるような、甘く切ない…おおっともう書けねえ!うおおこう来たか!ずっとコミカルSFだったのが最後に真摯な文学小説になってるじゃねえか!と驚愕させられ感動させられること必至、もう最初から最後まで技ありだらけのジョン・スコルジー新作『レッドスーツ』、SF初心者からすれっからしまで、さらにSF小説は読まんがSF映画なら大好きな方(なぜなら…グフフ)にも是非お勧めしたい、そんな傑作SF長編でありましたよ!
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