New Orderのライブアルバム「Live At Bestival 2012」が熱い!凄い!

Live at Bestival 2012 [帯解説 / 国内盤] (BRC385)
ニュー・オーダーのライブ・アルバムが発売された。これがもう、ジョイ・ディビジョンからのファンにとっては歓喜感涙の出来で、というのもニュー・オーダーのヒット曲のみならずジョイ・ディビジョン時代の名曲も3曲プレイされているからだ。
このライブは2012年9月8日に行われたUKの大型フェス【BESTIVAL 2012】で5万人の聴衆の前でプレイした様子を収めたもの(ちなみにこのフェスにはジョン・フォックスゲイリー・ニューマンらかつてのニューウェーブ・エレクトリック世代も出演していたという!嗚呼!)。ニュー・オーダーのメンツはバーナード・サムナー、スティーブ・モリス、ジリアン・ギルバートのオリジナルメンバーにバッド・ルーテナントのトム・チャップマンが参加。残念ながらピーター・フックの名前はない。収録曲は全13曲、内容はプレイリストを見てもらうとして、この中でジョイ・ディビジョン時代のカヴァー「Isolation」「Transmission」「Love Will Tear Us Apart」が演奏されている。
オープニングはダークな雰囲気のインスト「Elegia」が重々しく流れるが、その暗さが2曲目、「Regret」で一気に雰囲気を変わる。「君の名前も住所も忘れてしまった」と歌われるこの曲は、切なさと諦観がない交ぜになったままきらめくように明るく疾走する曲で、個人的にはニュー・オーダーで最も愛する曲であり、もうこの2曲目でオレは滂沱の涙。
そして3曲目にいきなりジョイ・ディビジョン・カヴァー「Isolation」!ジョイ・ディビジョン2作目にしてイアン・カーティスの死によりラストアルバムとなった「Closer」に収録されていたダークなこの曲が、新たなアレンジにより力強くダンサンブルな曲に生まれ変わっている!このアレンジ変更を聴くだけでもこのアルバムは必聴だろう。
そして高らかなストリングス音で始まる「Krafty」、シリアスなギターが唸る「Here to Stay」、美しいダンサンブル曲「Bizarre Love Triangle」、アグレッシブな「586」、デジタルビートの煌めく「The Perfect Kiss」、メランコリックでありながらハードな「True Faith」と、ニュー・オーダーの輝くべき名曲が続けざまに演じられて、いやおうなしに盛り上がってゆく。どの曲もライブならではのアレンジが施され別バージョンを聴かされているかのようだ。そして演奏はどれもパーフェクト、バーナードの歌声が相変わらず不安定なのは既に"仕様"だということもできる。
アルバムのクライマックスは10曲目、ニュー・オーダーの代名詞とも呼ぶべき名曲「Blue Monday」。今更書くまでもないことだがバンドメンバーであり友でもあったジョイ・ディビジョンのヴォーカル、イアン・カーティスの突然の死の衝撃を歌ったこの曲は、リリースから30年も経った今でも昏く甘い危険な死の匂いに満ち、「僕は今、どう感じたらいいんだろう?」と繰り返される歌詞と悲しく美しいメロディは感情が麻痺したような機械的なデジタルビートにぶった切りにされながら虚無の穴の中に吸い込まれてゆく。この曲では観客が一体になって大合唱した。
ダークサイドの極北だった「Blue Monday」の闇を払拭するかのように次に引き継がれる曲は歓喜と恍惚に満ちたノンストップ・ダンスナンバー「Temptation」。ジョイ・ディビジョン解散後、新生ニュー・オーダーとして生まれ変わった時にバンドの方向性を確立した確固たる意志に満ちた曲でもある。それはデジタルビートの導入によりジョイ・ディビジョンの闇から限りなく逃走し続けよう、と決意したメンバーたちの意志の表れなのだと思う。
そしてその後、ジョイ・ディビジョン時代の最も疾走感あふれるロックナンバー「Transmission」が流れ出す。陰鬱さと強迫観念が壊れた自動機械のように天の高みを目指すかのような、虚無と狂気が紙一重となった名曲で、個人的にはジョイ・ディビジョンで最も愛する曲だ。今でも一月に一回ぐらいは最大ボリュームで聴きたくなるし、大声で歌いたくなる、そんな曲なんだ。
ラストを飾るのはジョイ・ディビジョンの最も有名なナンバーであろう「Love Will Tear Us Apart」!「愛はまたも僕らを引く裂くのだろう」と逆説的な歌詞の歌われるこの曲は、自殺したイアン・カーティスの苦悩がダイヤモンドのように結晶化したナンバーであり、悲哀と絶望について歌われながらも、そのメロディはどこまでも美しく、そのリズムは性急かつ強固であり、あたかもそれは絶望そのものを肯定したかのような確信に満ちている。そして絶望について歌われたこの曲を会場一体となって大合唱しているその様は、レディオヘッドの負け犬についての曲「クリープ」を観客が大合唱する様と似てどこか倒錯的にすら感じさせるが、その強力な絶望こそが、逆に聴く者の心を浄化させる働きを持つのだろう。
ニュー・オーダーのライブというのは、正直に言ってその演奏力の拙さからこれまでもあまり積極的に接していなかったし、このアルバムも実はそれほど期待してはいなかったのだが、この「Live At Bestival 2012」ではいい意味で裏切られたどころか、自分のニュー・オーダー愛を再び確信させる非常に素晴らしいアルバムとして完成していた。ファンなら絶対、そしてロックファンの方にも是非聴いてもらいたいアルバムだ。

Tracklisting
01. Elegia
02. Regret
03. Isolation (Joy Division cover)
04. Krafty
05. Here to Stay
06. Bizarre Love Triangle
07. 586
08. The Perfect Kiss
09. True Faith
10. Blue Monday
11. Temptation
12. Transmission (Joy Division cover)
13. Love Will Tear Us Apart (Joy Division cover)

〇全曲試聴:http://www.iloud.jp/hotnews/new_orderlive_at_bestival_2012.php
New Order / Blue Monday / Bestival 2012

New Order / Love Will Tear Us Apart / Bestival 2012
(※クライマックスにステージスクリーンに映し出されるイアン・カーティスの雄姿、そして「FOREVER JOY DIVISION」の文字。かつて危険なぐらい心酔していたオレはもう、涙涙の涙のバーゲンセール状態)

Live at Bestival 2012 [輸入盤CD] (SBESTCD60)

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