最近読んだコミックなどなど〜羊の木(3)、ブラック・ジャック創作(秘)話(2)、謝男(シャーマン)(1)、暗殺教室(2)

■羊の木(3) / 原作:山上たつひこ、作画:いがらしみきお

羊の木(3) (イブニングKC)

羊の木(3) (イブニングKC)

山上たつひこいがらしみきお、というギャグマンガ界の【神】二人がタッグを組んで送る問題作第3巻。この『羊の木』は「刑期を終えた重犯罪者たちを秘密裏に地方都市に住まわせて更生させる」というプロジェクトによる異様な騒動を描くものだが、これまでギャグとサスペンスの両方の天秤の間で揺れながら、どこに着地点を持って行こうとしているのか皆目わからない奇妙に不安定で薄気味悪い展開が続き、読んでいるこっちも笑った顔を凍り付かせながら先行きを見守っていたが、この3巻にしてようやく前巻での破綻の胎芽が町全体を巻き込んだパニックへと成長してゆく兆しを見せ始め、「ああこれは犯罪者の性善説性悪説についての物語ではなくひとつのシミュレーションとして作り上げられたブラックなスラップスティック・ドラマなんだな」ということが分かってきた。1巻目で蒔かれた種が2巻目で犯罪者の数だけある毒草として芽を出し、この3巻ではそれぞれがてんでばらばらに毒素を撒き散らせながら化学反応を起こし、その猛毒と化した複合汚染物質はじわじわと街の至る所に降下し始めたのだ。あとはその瘴気がどれだけ街の住民たちを巻き込み屍が並んでゆくかを楽しみにすればいいのだろう。いよいよ決壊を起こしたパニックというダムの奔流はどこまで行き付くことになるのか。次巻が楽しみだ。

ブラック・ジャック創作(秘)話〜手塚治虫の仕事場から〜 2 / 宮崎 克、吉本 浩二

【神】漫画家・手塚治虫の壮絶かつ驚愕の創作秘話再び。第一巻の「FAXもインターネットも無かった時代、日本で書くべき原稿を間に合わせるため、アメリカから日本のアシスタントに国際電話で漫画のコマ割りの指示をミリ単位で出し、そこに埋めるべき背景を自らが過去に描いた膨大な漫画からページ数、コマ位置まで正確に指定してそれを書き写させた」というエピソードには驚嘆を超えて超人めいたものすら感じてしまったが、今回も〆切を抱える複数の漫画を同時に描いてゆく、なんて超人技を見せつけてくれる。手塚治虫自身というよりも手塚の周囲にいた人物、手塚に振り回された人物の焦点を当てて描かれているこの第2巻だが、普通の人なら単に「常識の無いはた迷惑な人物」でしかないところを(まあ担当編集者にはそうだったのだろうが)、手塚の作家オーラで天才ならではの神懸りなエピソードになってしまうという部分が面白い。それにしても当時の虫プロの過酷な職場環境なんかも併せて、手塚治虫というのはやはり日本の高度経済成長期と共にあった漫画の巨人だったのだなあ、と改めて思った。

■謝男(シャーマン)(1) / 板垣恵介

謝男 1巻 (ニチブンコミックス)

謝男 1巻 (ニチブンコミックス)

「土下座、それは新たなる戦闘形態!」とかいう意味のよく分からないテーマで漫画界をパニックに陥れた土下座漫画『どげせん』の共作者二人が意見の相違で決裂、片方のRIN氏が『どげせんR(リターンズ)』で再スタートしたのと合わせ、もう片方の板垣恵介氏は『謝男(シャーマン)』として新たに【真の土下座とは何か】を世に問うこととなったのである。そしてRIN氏のそれが土下座を通したコミカルな学園人情モノとして描かれているのに対し、板垣氏の『謝男』はより超自然的・感覚的であり、シュール化した論理…というか独立独歩過ぎる訳の分からなさで物語を牽引してゆく。RIN氏と板垣氏のこの2つの要素は『どげせん』で融合していたものだが、これが綺麗に分かれてしまっている、というのが面白い。そして個人的には馬鹿馬鹿しさという点においてどちらも好きだ。ただなんというか仲たがいしたロック・バンドメンバーのそれぞれのソロ作品を聴かされているような気になるのも確かで、「どっちも好きだが、バンドの時が一番よかったんだけどな」みたいに思わないでもない。

暗殺教室(2) / 松井優征

暗殺教室 2 (ジャンプコミックス)

暗殺教室 2 (ジャンプコミックス)

オレが珍しく読んでいいる少年ジャンプコミックの第2巻。超絶的な能力を持った宇宙人が落ちこぼれ学級の教師としてやってきたのだけれど、それは生徒に宇宙人教師を暗殺させるためで、そして1年以内に暗殺を成功させないと宇宙人は地球を消滅させるというお話を、なぜかほのぼのと描く、という無茶さが楽しいコミックなんですが、第1巻が宇宙人先生と生徒との丁々発止の暗殺やり取りを中心に描いたのと比べ、この2巻では宇宙人先生がその超常的な能力でもって落ちこぼれたちの成績を上げようと腐心する、でも暗殺ももちろんしてね、というも物語になってます。ジャンプ漫画らしく新キャラも次々登場、飽きさせずに読ませてくれますね。