スゲえコーマンを一発キメたので他のコーマンも満喫してみた!〜映画『コーマン帝国』『ロックンロール・ハイスクール』

コーマン帝国 (監督:アレックス・ステイプルトン 2011年アメリカ映画)


いやあやっぱコーマンですよコーマンいいっすよねえコーマンサイコーだわなあもう頭の中はコーマンのことで一杯、毎朝毎晩コーマンのことばっか考えて生きてますよ正直。アー今夜もコーマン見てえ!思いっきり鼻血が出るほどにコーマン見まくりてえ!…というコーマン・ファンのコーマン・ファンによるコーマン・ファンのためのドキュメンタリー映画、『コーマン帝国』でございます。
え?コーマンコーマン下品だって?はてなに通報しましただって?何言ってんですか、コーマンというのはね、ロジャー・コーマンという歴史に残る大・B級・映画監督の事ですよ!ロジャー・コーマン監督がB級映画界のみならずハリウッド映画界全てにとても大きな貢献を成したことをここで事細かく書くことはできませんが、50本以上の映画を撮り400本以上の映画プロデューサーとなり、その全てが低予算でさらに殆ど赤字を出さない興行であり、それだけでなくその映画製作に関わった中から多くのスターや名映画監督を輩出し、「インディペンデント映画の神」「B級映画の帝王」とまで呼ばれている人なんですね。
さらにさらに映画で知ったのですがコーマンとその弟が設立した映画製作・配給会社ニューワールド・ピクチャーズは、アメリカの大手がなかなか手を出そうとしない海外の渋い文芸映画作品をガンガンアメリカに配給していたりもするんですよ。儲けにシビアなだけでなく、やっぱりちゃんと映画を愛してるんですね。儲け、というよりか、この人は、一人の商売人として、単にまっとうな商売をしたい、と思ってるだけなんだと思うんですね。バクチ打ちみたいな商売はしないし、自意識過剰な作家性や芸術性を売りにした映画作品ではなくて、その辺の人がぷらっと入って料金分満足して出られるような料理を格安で提供する、定食屋のオヤジみたいな監督なわけなんですよ。で、そのノウハウがあまりにも徹底している上に儲けもOK集客もOKなんで、修行に来た料理人が自分の店出したらメッチャ大繁盛した、でも定食屋のオヤジである監督自身はこじんまりと儲かってりゃ良いから別に店大きくしたり手広くフランチャイズしたり高級料理や流行料理に手を出したりはしない、みたいなね。
で、そんなロジャー・コーマン作品なんですけど、その衰退を招いたのが作品の質の低下とか下品で無内容な映画作品への世間一般のバッシングとかではなくて、『ジョーズ』や『スターウォーズ』といった、コーマン映画の如く見世物であることに純粋に特化しつつ、なおかつ相応の予算も掛けた作品だった、という部分が、コーマン映画を殺したのがコーマンの子供たちだったという意味において、皮肉に感じましたね。ある意味、『ジョーズ』や『スターウォーズ』以降の娯楽映画というのは金の掛かったコーマン映画、ということすらでき、そういった部分でもコーマン監督の影響力は計り知れないものがあるでしょう。
このドキュメンタリー映画コーマン帝国』は様々な著名映画監督や著名俳優のインタビューを交えながらロジャー・コーマンという一人の映画監督がいかに優れた映画人であり映画界に貢献したかが描かれていきますが、コーマンはただ優れていただけではなく現行の映画業界に対してアンチの姿勢を取っていたからこそ、その反骨の精神とその行動が生み出した確固たる業績ゆえに評価されているのでしょう。実はコーマン映画ってちゃんと見たことの無いオレですらこの映画には心動かされるものがありましたが、それもひとえにロジャー・コーマンのその反骨精神と商売人としての地に足の着いた現実的な姿勢によるものからだったんですよ。なによりコーマンさん、その表情や喋り方から、非常に冷徹な批評眼を感じ、やはり只者ならぬ雰囲気を漂わせていましたね。

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■ロックンロール・ハイスクール (監督:アラン・アーカッシュ 1979年アメリカ映画)


とまあ『コーマン帝国』にそこまで感激し持ち上げておきながら、オレ自身はまずコーマン監督作品を一本もきちんと観た事がないし、実は今から観たいかというとそれもあんまり思わなかったりするんですね。それはコーマン作品観るよりもコーマンから(間接的でも)学んだコーマン的なB級映画のほうが面白く感じるし、観たいと思わせるからなんですよ。コーマン作品より多少(あるいは大量に)お金が掛かってる分、遥かに見栄えがするし、さらにセンスもずっと現代的だからなんですね。そしてコーマン監督のプロデュース作品も、まあ多分1、2本は観ているんだと思うんですが、とりたてて「コーマン製作!」とか意識していないんですよ。
しかし「『コーマン帝国』サイコー!」とか言っといてコーマン関連の映画をちゃんと観ないのはなんか卑怯な気がしたんで、『コーマン帝国』を踏まえたうえでロジャー・コーマン製作の映画を1本選んで観てみました。タイトルは『ロックンロール・ハイスクール』、勿論横浜銀蝿の『ツッパリ・ハイ・スクール・ロックン・ロール』や尾崎豊の『ハイスクールRocknRoll』とは何の関係もありません。『コーマン帝国』でもちょいとピックアップされている映画なんですが、なんでこの映画を選んだかというと実の所深い意味はありません。物語はロック大好き少女とその友達である主人公が、「ロックは不良化の原因!」とがなりたてるハイスクールの校長先生に反抗しながら、ついでに恋をしてみちゃったり、大好きなバンド、ラモーンズのライブに行ったり学校に呼び寄せたり、最後は何故か生徒みんなで学校を占拠し最後に爆破して燃え上がる校舎の前で愉快に楽しくロックンロールで踊り狂い、みんなハッピーでイッツオーライ!というこうやって書いてみるとかなりメチャクチャな映画ではあります。
しかし、巷の多くのロック映画というのが、実はロック・ミュージックをBGMにしただけの青春映画、という見方が出来る中で、メチャクチャなラストを迎えるこの映画というのは、ある意味真にロックンロールしたロックンロール映画だと言うことが出来るんですよね。そしてなにより出演し演奏もしているパンク・バンド、ラモーンズが「こりゃ人気も集まるわ」と思わせるほどカッコいい。まあ既に老人のオレの音楽の趣味ではないんですけど、イギリスでセックス・ピストルズがパンク・バンドとしてデビューする以前に既にアメリカでパンク・バンドとして注目を浴びていたラモーンズというバンドがどういうものだったのか、いかに彼らがパンク・バンドとして傑出していたのか、きちんと観る事が出来たのがよかったですね。