またやっちゃいました。〜映画『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』

ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える (監督:トッド・フィリップス 2011年アメリカ映画)


あの最凶最悪二日酔い軍団が性懲りも無く帰ってきた!前作『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い』においてあれほど酷い目に遭ったにもかかわらず、連中、友人の結婚式前に酒飲んでまたやらかしてしまったのだ!しかもなんと今回は『国境を越え』てしまっているのだ!舞台はアジア最大の観光地、タイ・バンコク!むせかえるような熱気と湿気と殺人的な日光の下、むせかえるような吐き気とだるさと殺人的な頭痛を抱え、失われた記憶を取り戻そうと学習能力皆無の男たちが奔走する!あんたら何回やったら気が済むねん!ああもう結婚式の時間がやってくる!破滅だ!オレたちゃ今度こそ絶対破滅だあああ!
ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』、「友人の結婚式前にみんなで酒飲んだら記憶がぶっ飛んでしまい、なにやら大変なことになっているのだが何も思い出せず、しかも友人の一人が行方不明」という前作の設定と全く一緒に、今度は舞台を海の向こうタイに置き、いわゆる『ハングオーバー!!デラックス版』として製作されているんですな。つまり海外ロケのゴージャス感というかエキゾチズムで目先を変えていますがやっていることは一緒です。まあアイドルがちょっと売れてきたんで東南アジアでイメージビデオ撮るみたいなもんです。ただ、前作からのキャラがあれこれ物語に関わっているので、前作を観ていたほうがより楽しめるのは言うまでもありません。
当然主要人物は前作と一緒、フィル(ブラッドリー・クーパー)、スチュ(エド・ヘルムス)、アラン(ザック・ガリフィアナキス)、ダグ(ジャスティン・バーサ)の4人。これにスチュの婚約者ローレンの弟テディ(エド・ヘルムズ)と、前作でも暴れまわっていたアジア系ギャング・ミスター・チャウ(ケン・チョン)が絡み、お話はどんどん怪しい方向へと流れてゆくんです。たださあ、今作で結婚する歯科医のステュって、前作でヘザー・グラハム扮するストリッパーとめでたく結婚したはずなのに、今作の結婚のお相手が違うのね。この結婚相手がタイ人だからタイで結婚式ってことなんだけど、やっぱりステュ、子持ちのストリッパーとじゃ上手くいかなかったのかしらん。まあタイ撮影という映画の設定上切り捨てられたのかもしれないけどちょっとモヤモヤは残るよね。
さて今回の「酔っ払ってなんだか知らないけどやらかしちゃった」のは以下のこと。
・全然知らない場所で目が覚めた!
・ステュの顔にタトゥーが入っている!
・アランは丸坊主
・テディがいない!しかも彼のものと思しき切断された指が!
・変な猿がいる!
・変なおっさんがいる…と思ったら前作のアジアギャング、ミスター・チャウじゃないか!?
…といった感じ。
『ハング・オーバー!!』はスラップスティクなコメディ映画ですが、そういった側面とは別に、少ないヒントを頼りに「記憶を失っている間に何が行われたのか」という謎を解き明かしてゆく、いわゆる「推理ドラマ」としての面白さがあったんですよね。そしてその解き明かされたはずの謎がまた別の謎と騒動を生み、事態はんどんカオスのズンドコへとはまりまくってゆく、という部分が新しかったし、面白かったコメディ映画でした。今作でもこれらの謎を突き止め、消えた友人(テディ)を探す、といったプロットに変わりはないんですが、前作よりは若干謎が少ないし、そしてその謎も、連鎖的に別の謎や騒動を呼びこまず、言ってみれば話の本筋とはあんまり関係なかったりするんです。つまり物語の伏線として機能していないんですよね。その辺がちょっと不満だったかなあ。
で、話の本筋となるのはなんと言っても行方不明のテディ探し。トッド・フィリップス監督というのは、非常にサディスティックなシチュエーションから強引に笑いを生み出そうとする部分がありますが、今回の指切断というシチュエーションはちょっと怖すぎて、オレ的にはなんだかシャレになんなかったなあ。物語全体を見ても、シナリオの弱さを出演者が無理に頑張ってわあわあやって補おうとしているように見え、ロケーションの目新しさで見られるものにはなっていますが、流石にこの2作目は苦労したんじゃないでしょうか。クライマックスのステュと義父との対決も、説得力に欠けていたと思います。まあしかしこれは粗探し、映画そのものは充分楽しめましたよ。