映画『レポゼッション・メン』はSFの名を借りた極悪スプラッタ・ムービーだったッ!?

レポゼッション・メン (監督:ミゲル・サポチニク 2010年アメリカ映画)


人工臓器が一般的になった未来、人類は様々な疾病から解放されたが、今度はその人工臓器の高額なローンが人々の生活をおびやかしていた。主人公はこのローンの支払えなくなった人々から人工臓器を取立て回収するチームの一人、レミー(ジュード・ロウ)。今日も滞納者をひっ捕らえてはその場でザクザク身体を切り刻み、人工臓器を回収する彼だったが、アクシデントが発生し彼自身も人工臓器を埋め込まれ、そしてそのローンが払えなくなった彼は今度は逆に追い立てられる身になってしまい…というSFホラー(?)。

人工臓器を病院ではなくその場で取り外しちゃう、それも心臓や肝臓など体にとって無くてはならない臓器だったら、取り外される人間にとっては死を意味するものだ。即ち滞納=死というわけで、幾ら人工臓器が一般的になった未来が来たとしても、こんな異常な話はありえないとは思うが、SFというのは極端でグロテスクな未来社会を創出することで現実世界のなんらかの暗喩を描くものなので、ある意味これは「払えなければ死ぬしか無い極端なローンがあたりまえの世界」というものを揶揄しているのだと思えばいいだろう。だからこの映画はある種の”取り立て屋”の残酷で皮肉なお伽話だと思って観ると意外と違和感がなく観ることが出来る。

映画の前半がよく観ると実に『ブレードランナー』と似通っているのが面白い。まあ近未来を描いた映画はどうしたって『ブレードランナー』と似てしまう宿命にあるが、立ち並ぶ超高層建築物、その街並みのそこここに見られる漢字を使ったフォント、さらに”取り立て屋”という名のブレードランナーレプリカントならぬ滞納者を追い立て、その内に滞納者の女に恋をし…という筋書きはやはり『ブレードランナー』を彷彿とさせないか。しかしこの映画の変わった所は、映画のそこここに”臓器摘出”というスプラッタシーンをこれでもか、と詰め込んでいるところだろう。オレは嫌いじゃないが「ナニ考えてこんな映画になったんだ?」という気がしないでもない。

勿論題材が題材なだけにホラー映画におけるスプラッタの如く自己目的化したものではないのだろうが、それにしても最初から最後までどんどんエスカレートしまくりながら画面に血飛沫が飛び血塗れの臓器が引きずり出され、主人公が敵と対決するクライマックスでは銃ではなく刃物を使って相手をグサグサ切り刻むアクションシーンが連発されるという徹底したスプラッタ状態で、刃物を使った「痛い」シーンも盛りだくさん、よくある「クールな近未来SF」だと思って観るとそれこそ「痛い目」に遭う。ある意味観る人を選ぶところがあるかも知れないので要注意かも。出演陣が非常に味がありドラマは楽しめたが、あの”オチ”はオレとしてはいただけなかったな。

レポゼッション・メン 予告編


REPO MEN

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レポメン (新潮文庫)

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