西巷説百物語 / 京極夏彦

西巷説百物語 (怪BOOKS)

西巷説百物語 (怪BOOKS)

第5作目の主役は、シリーズお馴染みのキャラクターで、又市の悪友・林蔵。大坂を舞台に、明確な悪意ではなく、それと知れず病んだ心が引き起こしてしまうが故に恐ろしい事件を描く。生きものであるが故の人間たちが抱える傷みの深さ、やるせなさと、林蔵の心づくしの憑きもの落としが胸を打つ。

巷説百物語』、前作までで前日譚から後日譚まで全て書き尽くし、新作など出ることはないだろうと思っていたらあにはからんや、なんとその新作が発表されたからびっくりである。いったいどうするのかと思ったら,今度はなんと"西"巷説百物語、つまり関西を舞台に、前作までの主要人物だった又一の友人・林蔵を主役に据えての物語となっている。関西が舞台のせいか商売がらみの事件を多く扱っているところ、又一シリーズよりそれほど血生臭くないところが新しいか。どちらにしろ京極堂シリーズが全く書かれなくなってしまった今、このシリーズ復活はファンとしても嬉しい。