■悪魔の凶暴パニック (監督:ジェフ・リーバーマン 1976年アメリカ映画)
ハゲが襲う!ハゲが吼える!ズラはどこだとハゲが哭く!月の蒼い夜、ハゲの頭が怪しく光り輝き、あなたの背後に迫り来る!?凶暴化したハゲが平和な街をパニックに陥れる戦慄と恐怖のハゲ・ホラー、『悪魔の凶暴パニック』だっ!?
…いやーひどい映画ですよね。ハゲ差別ですよね。ハゲのどこが悪いっちゅうねん、って話ですよね。こっちだってハゲになりたくてなってるわけじゃないっちゅうの、って感じですよね。あ、いやオレはハゲじゃないですよ、ハゲじゃないってば!
なにしろこの映画、ドラッグの副作用でハゲになって凶暴化する、ってことらしいんですが、いやいや、別にドラッグで凶暴化する、だけでいいじゃないですか。なんでわざわざ「ハゲになってから凶暴化」しなきゃならないんですか。見た目のインパクトが欲しい、っていうんならドラッグで顔がモンスターのように醜く崩れて、とかでもいいじゃないですか。それがなんでハゲなんだ、と。
映画でもね、それまで普通にしていた人が突然もがき苦しみ、そしてズラがバサッ…と取れてハゲがむき出しになり、そこからいきなり狂ったように暴れまくるんですよ。だいたいねえ、人が突然ハゲ頭になって「ふんがー!」とか言って暴れまくるなんて、それってホラーじゃなくて単なるギャグだろ。そしてそれを大真面目に撮ってるもんだからね、なーんか変な映画なんですよ。とりあえずオレは笑っちゃったぞ!
いやなにしろね、ストーリーや演出はとってもしっかりしているの。そもそもお話の中心っていうのは「ドラッグ事件の謎を追え!」っていうもので、ジャンル的にもどっちかというとホラーじゃなくきちんとしたサスペンス映画なんですよね。日本タイトルこそ『悪魔の凶暴パニック』なんてキワモノっぽいものだけど、原題はドラッグの名前である『BLUE SUNSHINE』っていうシリアスなタイトルなんですよね。それがハゲ頭がいきなり錯乱!とか入れちゃうから変になっちゃうんですよね。
ただ、その"変”さがこの映画の面白さであることも確かでね。実はこの映画の監督であるジェフ・リーバーマンは、あのホラー史に残るゲロゲロ虫パニック映画『スクワーム』を撮った人なんですよ。その監督が今回普通にサスペンス撮ろうとしたんだけど、持って生まれた変態の気質が滲み出てしまったんではないかと、そういう事なんではないかと思うんですね。
そういった意味ではデヴィッド・クローネンバーグとどこか似ているような気もしました。あの人もちゃんとした映画撮ろうとしてもどうしてもどこかに変態の臭いを漂わしちゃう人ですからねえ。この『悪魔の凶暴パニック』自体も、配役や社会の描き方や映画全体の雰囲気にクローネンバーグの作風を感じたんですよ。そういった部分でも面白い映画だなあ、と思いましたね。
■BLUE SUNSHINE Trailer
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