グラインドハウス3本立て!〜その2『ラストハウス・オン・デッドエンド・ストリート』

■ラストハウス・オン・デッドエンド・ストリート (監督:ロジャー・ワトキンス 1973年アメリカ映画)


いわゆる"クソ映画"ってやつにもいろいろとあって、「退屈すぎ」とか「意味が分からない」とか「作り方が雑」とか「要するにオナニー」とか「チチやケツが出てこないし人も死なない」なんていう理由がそれぞれあるのでしょう。そしてあんまりクソ過ぎるとかえって脚光を浴びちゃって『死霊の盆踊り』みたいにカルト映画としてもてはやされたりするものもあるわけです。限度を超えてクソ過ぎると逆に「どうやったらここまでクソに出来るんだ?」というある種の驚嘆と畏敬を抱かせるのでしょう。作る側の映画を撮る技量や才覚が足りないというだけにはとどまらない、もっと何か徹底した精神面のイビツさや欠落、それがフィルムの向こうから汚物のように滲みでているような映画が、いわゆるカルト映画として呼ばれることになるのでしょう。そういった意味ではある種のアウトサイダー・アートと通じるものを感じます。

でまあこの『ラストハウス・オン・デッドエンド・ストリート』ですが、お話っていうのは、とある映画監督が気に食わないプロデューサーに復讐するために、そのプロデューサーと奥さんをスナッフ・フィルムの餌食にしてしまうといったものです。スナッフ・フィルムというのは殺人を行っている様子が収められたフィルムのことなんですな。プロデューサーはリンチの果てに目に電気ドリルを突き立てられ、奥さんにいたっては生きたまま両足を切断され内臓を取り出されてしまいます。「プロデューサーへの監督の復讐」というお話は、推測ではありますが私怨をリンチ殺人という形で身も蓋もなく映画にしちゃった、という部分で実に稚拙で短絡的で、そういったイビツさが実にイヤーな感じで出ている映画でもあるんですね。

この映画は1973年製作(細かいことを書くと1973年に自主制作され、1977年に劇場公開)ということで、スナッフ・フィルムとしては1976年公開の映画『スナッフ』よりも早いんですね。1972年公開のウェス・クレイブン監督作品『鮮血の美学(LAST HOUSE ON THE LEFT)』と原題が似通っているので(「THE LAST HOUSE ON DEAD END STREET」)そういった部分を意識していたとするとスラッシャー映画としても早かったと言えるかもしれません(『悪魔のいけにえ』が1974年公開)。そういった意味ではスラッシャー/スナッフ・フィルムもののある種の先駆けだったといえないこともなく、それがカルト的に扱われる理由の一つなのでしょう。

しかし確かに惨たらしくて異様な映画なんですが、ただそれだけの映画でもあり、大した面白くもないんです。なにしろ70分程度の尺で前半4,50分はずーっとダラダラどうでもいいようなお話を撮ってるだけなんです。もともと自主制作だったせいか映像も音質も観ていて具合が悪くなるぐらい粗悪で、素人くさい撮影アングルや構図がまたしても具合を悪くさせます。"史上最悪の映画"とか"超問題作"とか"映画史の汚点"とかあれこれ大袈裟な言われ方をしていますが、まあ単なるクソ映画ってことでいいんだと思います。こういう映画はもてはやさずに資料的に扱うほうがいいような気がするなあ。

参考:ナマニクさんの暇潰し The Last House on Dead End Street (ラスト・ハウス・オン・デッド・エンド・ストリート) 井上貴子 ホラー狂のトラウマ映画論 あの映画、ほんとに人が死んだらしいよ! パート2

■The Last House on Dead End Street Trailer


グラインドハウス・ムービーDVD BOX

グラインドハウス・ムービーDVD BOX