オ・ルヴォアール・シモーヌ(Au Revoir Simone)。フランス語のバンド名だが実際はNY出身の女性3人組エレクトリック・ポップ・バンドである。女の子3人、キーボード主体の明るくキュートなポップ・バンド、と言ってしまうとありがちなアイドル・バンドのように思われてしまうかもしれないが、これが結構侮れない音を奏でている。
■Au Revoir Simone-Shadows Music
まず彼女らの音を特徴付けているのはその力みの無い気取らなさだろう。だから非常に軽やかで親しみやすい。エレクトリック主体なのにも関わらずスカスカした風通しのいいその音は、一昔前ならヘタウマ・バンドと呼ばれたかもしれないが、例えばリミックスバージョンばかり集めたアルバムなどを聴くと、重厚になったり音数が多くなっただけでも彼女らの音楽の持ち味が損なわれ、その面白さが無くなってしまうのがわかる。音に無理が無く、あざとさが無い。それが心地よいのだ。女の子3人ということから、いかにもファッショナブルな持ち上げ方をしているメディアもあるが、実のところルックスもごく普通のように思うし、ファッションも”ちょっぴりよそゆき”程度のもので、決してファッション先行なバンドではない。結局、音にしてもヴィジュアルにしても、この無理の無い自然体な部分が素敵なバンドなんだろうな。
■Au Revoir Simone-Sad Song
もうひとつはヨーロッパ風のメランコリックな曲調にある。オレなどは一聴してアイスランドのフォークトロニカ・バンド、ムームを、さらにポスト・パンク時代にイギリスのラフ・トレードで活躍したヤング・マーブル・ジャイアンツを、さらにはベルギーのレーベル、クレプスキュールで人気を博したアンテナなどを思い浮かべた。これらのバンド・ユニットはいわゆるオルタナティヴ系と呼ばれるような音でもあるが、このオ・ルヴォアール・シモーヌからは彼らの直系の血を感じるのだ。
■Múm-Green Grass Of Tunnel
■Young Marble Giants-CHOCI LONI
■Antena-CAMINO DEL SOL
インタビューなどを読んでもごく普通の音楽体験と実生活を送っている女の子たちのように思える。そしてその音も、エキセントリックな部分が少しも無い。かといって退屈な音では決して無い。やはりこの力の抜け具合が絶妙なのだ。無理が無く、無駄が無く、あざとさが無い。これらはある種の音楽的な批評性とも取れるが、彼女らの場合、それを直感的に音にしてしまっている。そして奏でられる音はとても可愛らしく朗らかなのだ。そこが面白い。君たちも聴きなさい。いいよ。とりあえず1枚だけ聴いてみたいなら最新作である3rdアルバム「Still Night, Still Light」が深みのある音をしていてお薦めだ。
■Au Revoir Simone - Another Likely Story
■Au Revoir Simone - Fallen Snow
■Au Revoir Simone-The Lucky One
■Still Night, Still Light / Au Revoir Simone
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