『ビッグ・バグズ・パニック』は『ミスト』+『ショーン・オブ・ザ・デッド』なモンスター・ムービーだった!?

■ビッグ・バグズ・パニック (監督:カイル・ランキン 2009年アメリカ映画)


虫だ!虫だ!虫だ!でっかい虫が襲ってくるッ!?タイトルそのまんまのB級直球ど真ん中モンスター・パニック・ムービー『ビッグ・バグズ・パニック』であります。レンタルDVD店によく並んでるアルバトロスあたりのトホホ映画にありがちなタイトルではありますが、しかーし!実はこれがなんと結構な拾いモノなんですよ!それもそのはず、『スターシップ・トゥルーパーズ』『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』『パッション』の製作陣がマジこいて作ったバリバリのB級魂全開映画なんでありますな!マジこくんならA級作ろうとか思わないの?向上心のない人私キライ!とか野暮なことは言わないように。B級にはB級なりの志ってモンがあるわけなんですよ。B級の志が高すぎて本国でもビデオスルーだったという話はこの際聞かなかったことにしよう!

ある日突然謎の怪音で街の住人が全員気絶、人々は全身を繭のようなものに包まれ、なんとその上にはドでかい虫がまたがって、人間の体からちゅうちゅう体液を吸っていた…という気色悪いオープニングから始まるこの映画、その繭から抜け出すことに成功した主人公が、仲間を集め虫たちと戦いながら必死の逃避行を行おうとするが…というお話なんですが、よくあるホラー映画と違うところはなんといっても主人公青年のボンクラぶり。見るからにバカで適当でだらしなさそうなダメさを醸し出すこの青年、映画冒頭から早速クビを言い渡され、その後も虫に追っかけまわされているのにくだらないヨタ飛ばしたり一所懸命女の子を口説いたりしています。マイペースなヤツだなあ…。このボンクラ青年が主人公というのと中盤まで殆ど銃が登場しない、というところがエドガー・ライト監督の『ショーン・オブ・ザ・デッド』を髣髴させ、イイ感じなユルさがこの映画の味わいをとってもマイルドにしております。即ちこの映画、ある日突然人々が奇怪な生物襲われる…という『ミスト』のシチュエーションを、『ショーン・オブ・ザ・デッド』のノリで描いちゃった!という映画だというわけなんですな!

そして中盤からは新キャラ登場、虫に刺され蜘蛛のような姿に変身させられた人間たちが襲い掛かり、主人公たちの行く手を阻むわけです。これがどことなく『遊星からの物体X』ぽくてさらに観ているオレのB級モンスター映画魂を熱くさせるんですな!さらに仲間が虫に刺され、虫化してゆく運命を見なきゃならない…というゾンビ映画的展開も加味されているのですよ。おまけにサバイバル・マニアの主人公のお父さんまで登場し、核シェルターで気勢を上げるとこなんざB級モンスターホラーの隠れた名作、『トレマーズ』を思い出させますな。いやあなんだいなんだい、今まで挙げた映画ってどれも全部オレの好みだよ!こうしてみるとこの『ビッグ・バグズ・パニック』、B級モンスターホラームービー好きの趣味をしっかり押さえた好作ということができますな!だから今まで出た映画タイトルでちょっとでもヒクヒクッと反応した方には是非お勧めしたいですな。後半は虫軍団に連れ去られた女子を救うために主人公が一念発起して巨大虫の巣に突撃し、ダメ男が最後に男を見せるというダメ男ムービーの王道も踏襲し、大いに盛り上げてくれますよ。肩肘張らないB級モンスター映画『ビッグ・バグズ・パニック』、貴方も是非どうぞ。