■グール(上) (下) / マイケル・スレイド
- 作者: マイケル・スレイド,大島豊
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2004/03/26
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随分前にどこかのお薦めで買ったきり永らく積読にしていたマイケル・スレイドの『グール』上下巻やっと読了。複数の殺人鬼が陰惨な手口の殺害を繰り返し、屠殺工場の如く死体の山を築いてゆく、血と絶叫と死と臓物に満ち溢れたスプラッター巨篇である。さらにクトゥルー神話やホラー映画、ヘヴィ・メタルへのリスペクトなどが文章のそこかしこに散りばめられ、物語は異様なテンションで驀進してゆくのだ。いやー、スプラッター好きのオレも「よくやるよなあ」と呆れてしまうぐらい極悪な血まみれ小説でございました。
ただし限りなくホラー小説の雰囲気を漂わせながらも、実質は超自然的な要素が一切無いいわゆる”サイコ・スリラー”と呼ぶべき物語であり、そろそろ邪神が触手をくねらせながら人間たちを頭から齧りに現れるかなあとか期待してもそういう展開は無かったりする。むしろ根っこの部分はミステリ小説の方法論を踏襲しており、オーソドックスな犯人探しの謎解きや犯行動機の説明的な解題があったりする。オレのようなどちかというとホラー寄りの人間にとっては、まだるっこしいミステリ展開はいいから怪物悪霊が跳梁跋扈するドロドロホラーにしてくれたほうがより楽しめたかもしれない。
それでも十分に面白い作品ではあったが、ちょっとだけ苦言を呈するなら、ちょっと真面目に書きすぎてるなあ、という印象。もちろん酸鼻を極める殺戮描写の克明さなどはこの真面目さから来るものなのだろうが、ヘヴィ・メタルやホラー映画を取り上げているのなら、もっとロックンロールなハメの外し方というかノリの良さがあってもよかったように思う。訳文にしても犯人を呼ぶのに「下水道殺人鬼」「吸血殺人鬼」「爆殺魔ジャック」というのはなんだか名前の響きとして固いし古臭くないか。折角の主役なんだし、もう少し愛称っぽいポップな名前をつけてもよかったんじゃないのかな。