■ロボゲイシャ (監督:井口昇 2009年日本映画)
ロボゲイシャ!
ロボは少年の夢!ロボは日本の匠(たくみ)!
ロボゲイシャ!
ゲイシャはオヤジの夢!ゲイシャは日本の雅(みやび)!
そのロボとゲイシャが華やかに合体した夢の中の夢の映画、それがロボゲイシャだッ!
みんなでロボろうロボゲイシャ!
ゲイシャがムフフだロボゲイシャ!
ロボゲイシャ!ロボゲイシャ!ロボゲイシャ!
あの『片腕マシンガール』で世のボンクラ映画好きを狂喜乱舞させた監督・井口昇による新作ボンクラ映画『ロボゲイシャ』!ゲイシャ・アーミー!ニンジャ・ガールズ!天狗軍(テングン)!尻刀!ゲイシャ・ミサイル!ゲイシャ・トランスフォーマー!城ロボ!その他その他、その場の単なる思い付きをそのまま映像化したら右に出るもののいない井口昇の面目躍如なトホホな特撮満載です!妄想爆発、というか妄想ダダ漏れ、もう好き勝手やって楽しそうだなあ…という雰囲気が観ているもんにも伝わってきますな。
とか言いつつ実は「好き勝手やって」た訳ではなく、前作『片腕マシンガール』ではアメリカ資本ということで笑っちゃうほど過激なスプラッタ描写がてんこ盛りでしたが、今回は角川出資の日本映画なんで「ダメ!スプラッタ!」な状況で製作されたらしいんですな。だから観ていて「あー、ここはホントは鮮血ドバーッ!とかやりたかたんだろうなあ」「ここは首チョンパだろフツーッ!」と思ったシーンも無難に流しています。しかしこれはこれで功を奏していたと思います。制約あったら制約あったでそれなりのもんを作るのが製作者の心意気ってもんですよ!
じゃあどうしたかというとギャグでそれを補填したんですな。馬鹿馬鹿しい特撮もそうですが、キャストに松尾スズキ、志垣太郎、竹中直人を揃えて細かいボケを連発させておりました。逆に『片腕マシンガール』の時は「日本人のギャグセンスは白人にはわかんないから入れちゃダメ」というお達しが出ていたそうですから、これって構成的に"裏"『片腕マシンガール』ということになるんじゃないでしょうか。確かに小ネタが多くて「それはちょっとビミョー」なギャグもありましたが、そこはノリでカバー出来ていたと思います。
このノリ、というのは重要で、撮るもんのノリもありますが観るもんのノリも必要だったりするんですな。結局この映画というのは悪ふざけと悪ノリがテーマになっておりますから、バカ映画と割り切ってお祭りに参加するつもりで観ることも大事かもしれません。だから客観的な批評をするのはちょっとナニではありますが、僭越ながらちょっとだけ気になった点を申しますと、やっぱり相当低予算だったんだなーと分かってしまうセットや設定の寂しさが見受けられます。ここもうちょっと金掛けてればいい映像なのになあ…というシーンが多々あったんですが、この資金は全部「城ロボ」に持っていかれたんだろうなあ…と思うといたしかたありません。"ゲイシャ"とタイトルに銘打たれているのにもうちょっと可愛い女の子が揃えられなかったのか…とも思っちゃいました。ゲイシャなのに「うふん(はあと)」なエロ度が足りないんですよ。これだけはちょっと致命的な気がしました。
それとシナリオや台詞はもう少し練り上げたほうがよかったかも…とやはり僭越ながら思う次第であります。物語のメインは姉妹の愛憎ドラマということになるのですが、割とどうでもいい紋切り型のドラマ展開になってしまい興味が沸かないんですな。ここは前作『片腕マシンガール』のように"復讐のドラマ"ということにしたほうがシンプルで分かりやすかったのではないでしょうか。あとやたら説明的な台詞も気になりました。映像の状況を見れば分かるのに、それをわざわざ台詞で補完していることが多くて、これは必要なかったと思うんですな。とまああれこれ余計なことを言ってしまいましたが、絵的なインパクトの面白さ・バカさと言った点で、こういう映画をこれからも作られ続けるよう井口監督にエールを送りたいと思います。