東京残酷警察 (監督:西村喜廣 2008年アメリカ映画)


という訳で『東京残酷警察』を観て来た訳だが。『片腕マシンガール』に続くアメリカ資本の“TOKYO SHOCK”シリーズ第二弾ということらしいね。笑っちゃうぐらい大量の血が噴出すスプラッター映画だ。

片腕マシンガール』もハチャメチャだったけれど、この『東京残酷警察』も輪をかけてハチャメチャだったね。でも血みどろだけども馬鹿馬鹿しく作ってあるせいで猟奇!残虐!というふうには見えないんだ。お化け屋敷の作り物のお化けのチープさとでもいうか。それを楽しめたらこの映画は面白く観られるだろうね。

作品としては「思う存分やりました!」といった疾走感がある代わり、あれこれやりすぎてとっちらかっているように感じたな。物語も弱いし。説明なんか要らない!イメージと感性なんだ!ビジュアルこそが全てなんだ!と言われればそれまでなんだけど。

そのビジュアル・センスにしても塚本晋也の『鉄男』あたりからあんまり進化を感じない手造りサイバー・ホラーって雰囲気だったけど。民営化された警察とエンジニアと呼ばれる異形の人間達との戦い、というコンセプトは物凄く面白いのに、ハチャメチャに流れてしまったばかりにそれを上手く生かしきっていないんだよね。

その絵作りもわざとチャチくしているのかもともとセンスがチャチいのかよく分かんないんだよな。監督の本気はどの辺にあるのか?それとも全部はぐらかしなのか?血飛沫ピュー!さえ撮っていれば満足なのか?という点が気になった。『片腕マシンガール』も同じように馬鹿馬鹿しいスプラッター・ホラーだったけれど、あれはアホなものを作りたい、という意図がはっきり見えたからこそあれほど爽快だったのね。でもこの『東京残酷警察』ではそこまで突き抜けられない気取りを感じてしまったな。

アメリカ資本ということからか妙なジャポネスクを強調しているのもちょっとあざとく感じたな。これは製作側の要請だったのかもしれないけどね。主人公、なんで振袖風の変な洋服着て満員電車に乗らなきゃならないの?とか思ってしまったし、みんなマシンガンバリバリ鳴らしている所で一人だけ長刀持って戦ってる女がいたりとかさ。あと今時ルーズソックスは無いんじゃないの?

それといわゆる他の映画や漫画作品への"オマージュ"が多すぎてそれも鼻についたなあ。初っ端が『悪魔のいけにえ2』風の二丁チェーンソーでしょ。廃ビルを使って警察署に見せているのは『マッドマックス』だし、SM小屋は『ホステル』だし、人体に鍵を挿入する場面は『ビデオドローム』の流用だし、警察署長は『バイオレンスジャック』のスラムキングで、御丁寧に人犬まで連れている始末。『デビルマン』ネタが出たときには一人の作家から二つはパクッちゃダメよ!と言いたくなってしまった。

で、思ったんだけど、この映画って永井豪のダイナミック・プロ所属の漫画家、風忍の漫画なんだよな。ジャポネスク!スーパーバイオレンス!サイケデリック!グロテスク!スプラッター!ほんのちょっとSF!そして大風呂敷は広げるけどよくわかんないストーリー!で、センスは古臭い、と。海外のホラー映画監督が新しいホラーを模索している中で、この作品はどこか古き善きアングラなんだよね。好きな人は好きだろうけど、ずっとそこに安住していても詰まんないって感じがするけどね。

それにしても何で敵の親玉が板尾創路なんだよ!?で、何で最後は板尾が『ブラックジャック』になって姿を消すんだよッ!?

東京残酷警察 予告編