『30デイズ・ナイト』コミック・シリーズ

30デイズ・ナイト / 原作:スティーブ・ナイルズ、アート:ベン・テンプルスミス

30デイズ・ナイト (アナザー・パラダイムシリーズ)

30デイズ・ナイト (アナザー・パラダイムシリーズ)

映画『30デイズ・ナイト』原作。アメリカ最北の地バロウ、北極圏内に位置するこの街には、白夜とは逆に30日間日が昇らず闇に閉ざされる"極夜"の時期が存在する。そして、この終わらない夜の闇を狙い、住民たちを屠ろうと闇の種族ヴァンパイアたちが街へと集結し始めた。次々に血を啜られ虐殺されてゆく住人たち。彼らに救いはあるのか?…という物語。
設定の面白さがなにより目を引く作品だが、ページ数がさほど無い為かかなりシンプルでストレートに物語が展開してゆき、住民たちはあれよあれよという間にかじり殺され、あっというまにクライマックスを迎えてしまう。だがそのシンプルさゆえに愛惜極まりないラストが切なく生きてくる。しかしこの作品で一番特筆すべきなのはその不気味なアートワークだろう。フランシス・ベーコンの描く絵画作品のように歪み、崩れ、傾いだ人物像、暗く狂気に満ちた悪鬼たちの表情は、見るものをどこもまでも不安にさせる。そして白と黒とグレイを基調とした色彩の中に突然踊る鮮血の赤が、物語の恐怖を一層掻き立てるのだ。

■ダーク・デイズ / 原作:スティーブ・ナイルズ、アート:ベン・テンプルスミス他

ダーク・デイズ (アナザー・パラダイムシリーズ)

ダーク・デイズ (アナザー・パラダイムシリーズ)

30デイズ・ナイト』で生き残った登場人物が、バロウでの復讐を果たす為にヴァンパイアたちの拠点、ロサンゼルスに乗り込み、ヴァンパイア軍団と血で血を洗う死闘を繰り広げる。『30デイズ・ナイト』のあのラストの続きかと思うと、主人公の復讐の念には思わず感情移入してしまい、ある意味『30デイズ・ナイト』よりも楽しめる作品となっている。『30デイズ・ナイト』が『エイリアン』だとするとこの『ダーク・デイズ』は『エイリアン2』だな。物語も人間関係も前作より複雑になり、読み応えが増している。

30デイズ・ナイト:リターン・トゥ・バロウ / 原作:スティーブ・ナイルズ、アート:ベン・テンプルスミス他

30デイズ・ナイト:リターン・トゥ・バロウ (アナザー・パラダイムシリーズ)

30デイズ・ナイト:リターン・トゥ・バロウ (アナザー・パラダイムシリーズ)

そして再び、殺戮の町バロウ。『30デイズ・ナイト』で生き残った住人たちと新たな入植者たちが、またもや極夜の夜の闇を狙って襲ってくるヴァンパイアどもを迎え撃とうと完全武装し、ここに人間対ヴァンパイアの全面戦争が巻き起こる。だがヴァンパイアどももまた以前の敗北から学び、火器で武装してこれに対抗しようとしていた。最初は圧倒していた筈の人間たちは次第にヴァンパイアの魔の手にかかり劣勢へと転じてゆく。人間たちに勝ち目はあるのか…。人間とヴァンパイアが銃撃戦を行うというシチュエーションが面白い。そしてラストはこのサーガを締めくくるに相応しい胸に迫るフィナーレを見せるのだ。