不思議の森アリス / リチャード・マシスン

不思議の森のアリス (ダーク・ファンタジー・コレクション)

不思議の森のアリス (ダーク・ファンタジー・コレクション)


ダーク・ファンタジー・コレクション第2巻。リチャード・マシスンは映画『アイ・アム・レジェンド』や『激突!』、『ヘルハウス』などの原作者としても知られるが、この短編集『不思議の森のアリス』でも、往時に脚本を手掛けていた米TVシリーズ「トワイライト・ゾーン」を髣髴させるホラー・テイストのサスペンス・ストーリーが収録されている。確かに今読むとアイディア的には既にあちこちで流用され新鮮味が薄かったりはするものの、"古き善き"米SFホラー番組の懐かしい匂いがぷんぷんして楽しめた。例えば本書に収められた「2万フィートの悪夢」は映画版「トワイライトゾーン/異次元の体験」の原作だったりもする。このテイストが後の「X -ファイル」などにも繋がっていったのだろう。リチャード・マシスンの短篇のよさは、非常に分かりやすくシンプルなストーリーを、丁寧でストレートな語り口で描いていることだろう。その中で登場人物達は決してシニシズムやペシミズムに囚われることなく、自らの運命と対峙してゆくのだが、そういった点も多くの読者の共感を生む元なのではないかと思う。作家性にこだわるよりもエンターティメントに徹した非常に手馴れた娯楽作家だということができる。