
- 作者: チャールズボウモント,Charles Beaumont,仁賀克雄
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2007/10
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 4回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
『残酷な童話』の諸作品の特徴は妄執の物語ということになるだろうか。その妄執は登場人物を陶酔させ、または周囲から逸脱させ、さらに己や周囲を傷つけたりもする。しかしまた、人はその凡庸な人生から逃れるために自らの妄執へと逃避するしか術を知らなかったりもするのだ。だからボウモントの物語にはどこか奇妙な哀感がある。さらに作品は結末を読者の想像にまかせたまま終わるものも少なくない。それは人生の問題に単純な結果や簡単な結末がつかないのと同じなのかもしれない。
幾つかの作品を紹介してみる。「残酷な童話」は狂気ともいえる厳格な教育を押し付ける母と虐待される子供との"残酷な童話"の物語。「消えゆくアメリカ人」は他人から空気のように扱われる男のお話。「名誉の問題」はチンピラの仲間に認めてもらうために恐ろしい決断をする少年を描く。「フェア・レディ」ではオールドミスの女がたった一言の聞き間違いから相手に長い片思いを続けてしまう。「ただの土」は業突く張りの男の皮肉な最期を描く。「夢列車」は列車旅行に赴く少年の幻想と失望のお話。「ダーク・ミュージック」も厳格すぎる女が森から聴こえる官能的な音楽に惑わされ自らを失っていくという物語。「昨夜は雨」では"シュヴァルの理想宮"を髣髴させるような城を建てる男とあるカップルとの悲痛な物語が展開する。「ブラック・カントリー」はジャズ・ミュージシャンたちとその奏でる音楽の熱気を描ききった音楽小説。「変態者」は同性愛が常識となり異性愛が非合法となった世界の物語。そして「犬の毛」はある男が悪魔と不老長寿の契約をしたがその報酬は月一、一本の毛で…というもので、結末は予想できるもののドタバタ振りが楽しい一作。
■『夜の旅その他の旅』レビュー/メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

- 作者: チャールズボーモント,Charles Beaumont,小笠原豊樹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/07/01
- メディア: 単行本
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (28件) を見る