未来歳時記 バイオの黙示録 / 諸星大二郎

未来歳時記バイオの黙示録 (ヤングジャンプコミックス)

未来歳時記バイオの黙示録 (ヤングジャンプコミックス)

バイオテクノロジーの暴走により半ば滅びかけた未来世界。動植物にはどれも異なった生物の遺伝子が混合し、人間さえもが他の生物の特質が発生するようになった。これら遺伝子異常を起こし、異様な姿と成り果てた人間達は、社会から追放され、荒野をさまよっていた…。
諸星大二郎といえば出世作「生物都市」を今でも思い出す。無生物と生物が融合してしまうという謎のウィルスによって、飴のようにとろけ出し、車や家並みと合体してゆく人間たち、というあまりにも異様な世界の終末を描き出したこの作品は、かつてどんな小説も漫画作品も描き出したことのないようなショッキングなビジョンに満ちていた。
そして今回の「バイオの黙示録」では、人間のような植物と動物、動物や植物のような人間…といった境界の曖昧になった生物相を描き、「生物都市」を髣髴とさせるシュールな展開を見せているが、そこに”科学”とか”遺伝子”とかいった説明が入ったことにより、どうしても寓話的な側面が強くなってしまい、得体の知れない異界を描写した諸星のこれまでの作品に比べると、異様さや凄みが薄かったように思える。
そもそも”獣人”というモチーフがそれほど新鮮じゃないんだよなあ。バイオテクノロジーの暴走、というのなら、むしろ細胞増殖が異常化し、あたかも生ける肉腫のようにぐじゃどろに膨らみ続けた肉塊生物、なんて感じのほうが不気味で面白いような気もするが。
あと”様々な生物が融合した生命”って、永井豪の「デビルマン」に出てくる悪魔をちょっと思い出して、あー、あの物語はひょっとして古代文明のバイオテクノロジーが生み出した怪物が主人公だったってことなのか?なんてぇ妄想をしてしまった。
(↓「生物都市」収録単行本「彼方より―諸星大二郎自選短編集」)
彼方より―諸星大二郎自選短編集 (集英社文庫―コミック版)

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