闇に閉ざされた街、連続殺人の容疑者にされた記憶喪失の主人公、午前0時にいっせいに気を失う街の住人、地下に潜む不気味な黒コートの一団、世界を司る不気味な機械、植物のように成長し形を変えてゆく建造物、そして合成された”新たな記憶”を人々に注入して歩く謎の男。「クロウ 飛翔伝説」「アイ、ロボット」の監督
アレックス・プロヤスによる異様なSF世界。
ジェニファー・コネリー 、
キーファー・サザーランド、
ウィリアム・ハート主演。作品のテイストはセットのせいもあってかどことなくヨーロッパ風。しかしこんな暗くどんよりとして掴み所の無い物語を、いくら前作「クロウ 飛翔伝説」が出来のいい作品だったにしろ、ハリウッドのプロデューサーがよくもまあ製作させたもんだなあ、とちょっと感心した。しかし興行成績は知らないが、観ていて非常に惹きつけられるものを持った作品であるのは確かだ。要するに、世界も自分の記憶も全て作り物であり、得体の知れない誰かなり何かが謎のテクノロジーでもって捏造したニセモノである、というお話なのだが、こういう「現実だと思っていたものが実は現実でもなんでもない」なんていう
離人症めいた感覚というのは、結構誰しも感じたことのあるものなのではないか。この映画は、その感覚をSFとして発展させ料理したもので、映画「
マトリックス」もそんなコンセプトの元に作られたものだし、
神林長平の短篇『甘やかな月の錆』(短編集『言葉使い師』収録)、あるいは
板橋しゅうほうのコミック『アイ・シティ』あたりにも非常によく似ているなあ、と思って観ていた。こういうテーマって嫌いじゃないんだよなあ。