ゾンビーノ (監督:アンドリュー・カリー 2006年カナダ映画)

あの怖いゾンビが召使やペットになっちゃった!?という映画である。「ヴーッ、ヴーッ」とか言いながら料理運んできたり庭掃除したりしているわけだ。で、子供とボール遊びしてついでに婆さんを食い殺しちゃったりもするんである。いくらなんでも腐りかけてババッチイ顔したゾンビをお部屋の隅において家事やらせたいですか!?という意見や、死ぬ前の遺族にはなんも問題ないんですかね!?といった意見はこの際置いておこう。動きがぎこちないから実はあんまり使えない、ということにも目をつぶっておこう。まあ映画を観た人はだいたい気付いていると思うが、これってかつてのアメリカの奴隷制度のパロディってことなんだろうな。ゾンビを制御できる科学はあるけれど、物語世界はアメリカが最も幸福だった古き善き60年代の雰囲気で描かれていて、そしてこの世界には黒人が全く存在しないんだよね。アメリカ60年代といえば公民権運動が最も盛んだった時代で、この時代に黒人が公民権運動なんかしないで奴隷のまんまだったら良かったのになあ、という恐ろしい意図の透けて見える物語だったりもするんである。しかしこの映画、実はカナダ映画なので、そんなことを考えかねないアメリカ人への皮肉であるということかもしれない。しかし、この映画の生きている登場人物を全員黒人にして、ゾンビを全員白人にして、その白人ゾンビを黒人が召使にしている、なんて設定だったらもっときついジョークになっていただろうな。これがホントのブラック・ジョーク、なんつって(おいおいやめとけって)。