能登の白クマうらみのはり手 / 山上たつひこ

山上たつひこといえば赤塚不二夫いがらしみきおと並び、ギャグマンガ界の頂点に立った漫画家だと言ってもいいだろう。幼少時から青年期にかけて、オレの頭の中はこれらの作品のナンセンスギャグにどっぷり浸かり続け、その性格形成に多大なる影響を与えたであろうことは間違いない。要するに、大好きだったんダッ!もうなあ、ガキの頃は下らないことばっかり言ったりやったりしていたもんなあ。…あ、今でも変わってない…。
この『能登の白クマうらみのはり手』は《THE VERY BEST OF TATSUHIKO YAMAGAMI》と名づけられた山上たつひこ傑作集全5巻の内の第1巻。結構読んでいない作品があって面白かったが、やはり何と言っても《イボグリくん》シリーズが白眉だろうな。《イボグリくん》というのは大昔の漫画《いがぐり君》のパロディなんだが、坊主頭に学生服、小太りの体型をした柔道少年なのだ。漫画『幽気ヶ原の決斗』ではこの《イボグリくん》が朝日を背に「きもちのよい朝だなあ 今日もなんか良いことありそうだぞ」とはつらつとして出掛けるシーンから始まるのだが、道々牛乳配達少年をダイナマイトで爆殺し、睡眠薬を少女に飲ませ乱暴し、さらに果たし状を突きつけてきた宿敵を射殺して、最後は夕日に向かって「明日はきっと日本晴れだぞ」とさわやかに言い放つという、不条理と狂気に満ちたドス黒いギャグ漫画なのである。
他の作品でもブサイクでムキムキの男達が妙なポージングを決める《練馬変態クラブ》ノリのネタなど満載だ!それにしても山上の漫画の登場人物ってホントにブサイクで濃い顔した男が多いよなあ…。そしてその殆どが卑屈でコンプレックスが強くて厚かましくてド助兵衛なのである。要するにカッペ臭い連中ばかりなんだが、山上が全盛期だった頃の日本の男なんてみんなカッペ臭い連中ばっかりだった。勿論オレも含むがな!それは日本なんて結局ムラじゃねえか、って事だったんだと思う。残りの4巻も順次刊行予定で、早く読みたくて堪らんわ!しかし第2巻のタイトルが『にぎり寿司三億年』って…。