初心者お薦めB級/カルト映画とは何か

会社後輩のKちゃんが、オレの陰謀によりタランティーノの『デス・プルーフ』をついつい観てしまう。感想を聞いたらかなり面白かったらしく、「いいですねB級テイスト!」などと興奮気味なのである。なんでも『キル・ビル』よりも面白かったそうな。どちらかというと女子っぽく単館ロードショーなどでやっている小洒落た映画を観ているKちゃんであるが、タラの術中に嵌ってしまったらしい。ここは常日頃B級・Z級・カルト映画の鑑賞に勤しみ、血みどろ残虐ホラーをDVDコレクションしては怪しくグフフと笑みを浮かべているこのオレ様が、B級・Z級・カルト映画の伝道を試み更なる追い討ちをかけねば映画の神の祟りに遭うやもしれん。
だいたいどんなジャンルでも「初心者お薦め」なんていうものは、分かりやすくどんな人間にも受け入れられやすい間口の広いものが選ばれがちだが、おれはそんなコンサバティブな考えじゃアカン、と強く強く思う次第である。それはそのジャンルにもこれから薦められる人間にも中途半端でヌルイものにしか過ぎない、失礼なものだと考えるからだ。そもそもその本なり映画なり、そのジャンルを愛してしまうきっかけというのは、そのジャンルの最も強力な作品に頭をガツンッ!とやられたからではないか。もしもお薦めは、などと問われたら、そのジャンルの最もディープでコアなものを薦めるのが本当の親切だと思うのである。そしてそれに拒否反応を示したなら、それはそのジャンルにそもそも縁が無かっただけなんである。だからオレは「SFで面白い作品は?」と訊かれたら「レムとディック読めゴルァ!あとギブソンも」と答えるし、「テクノってどうなんですか?」と訊かれたら「デトロイトの前にデトロイト無し!」と喚き、「なんか面白いゲームある?」と訊かれたら「ハイエンドグラボ買って『STALKER』やりやがれ!」と暴れるのである。まあ要するに自分の好みをとことん押し付けるということであるが、「面白いもの」の情報なんて腐るほどあるのにオレに訊く、というのは既にオレのキャラを見越してのことである、と受け止めて当然なのである。
さてB級/カルト映画あるが、これもピンからキリまであり、どの辺から攻めるかというのも考える余地はあると思うが、ここはあくまでオレが持っているDVDいうことでお薦めしてあげようと思った次第である。ちなみにKちゃんのスペックを表記すると「24歳女子・オダギリジョー好きの美人」である。そのスペックを鑑みながらセレクトした映画は、ずばり『ゾンビ』、そして『片腕カンフー対空飛ぶギロチン』、さらに『エル・トポ』であった。次点としては『少林寺三十六房』『死霊のはらわた』もあった。…全然スペック鑑みてねーじゃん。勿論こっそりとフィンランドのキャワイイ少女映画『ヘイフラワーとキルトシュー』も入れておいた姑息なオレだがな。「タルコフスキーなんかもいいよ」などと知ったかぶって気取りくさったことをほざいたのもここで明らかにしておこう!なんだい言ってる事とやってる事がちゃうやんかオレ!いいんだよ若い娘の前では姑息で卑屈になるんだよオレは!おいおい最後は逆切れかよこのエントリ!