もう花見の時期は逸してしまったけれど、オレにとって春の花というのは、桜と言うよりもチューリップを思い浮かべちゃうよな。
…チューリップ!すんませんベタベタで。なんか小学校の入学式なイメージがあるよな。ジャポニカ学習帳とかね!多分オレのなかでもそういう光景が刷り込まれてるのだろうな。華麗に咲き乱れる桜と比べてチューリップは可愛らしいイメージでしょうかね。でもオレの生家の北海道は桜の開花時期が遅くて、さらにオレの住んでた町では山の上の公園にでも行かなければ桜なんてそう見られるものではなかったから、桜ってものにあまり思い出がないんだ。郷愁もないし感傷もない。
チューリップは日本の在来種ではないし、基本的に花壇に植えられるものだから、どこか人工的な感じがするよね。色も赤・白・黄色と原色だから、ある意味ストレート過ぎて味わいがないというか情緒がないものだけれど、誰でもすぐイラストにできるあの簡単な造形が素直で好きだ。
オレ、子供の頃、花育てるのが好きでね。(…はい、そこ、笑わないように)春になると種だの球根だの買ってきて、家の狭い狭い庭先に埋めてたもんなんですよ。基本はアサガオ、ヒマワリ、3色スミレかな。
小学校の温室も好きだった。あの湿気とむせ返る様な土と植物の臭い、普段は見ることもできないような名前も知らない花々の鮮やかな色合いや奇妙な形態。子供ではあったけれど、オレは温室のあの温く湿った空気と静的だが濃密な植物の生い茂る生態系の香りに、微妙にセクシュアルなものを感じていたのかもしれない。
花といえば近所の広っぱにはいつも信じられないぐらいの数のタンポポが咲き乱れていた。タンポポに混じってオニアザミやスミレ、マーガレット、シロツメクサなんかが咲いていた。タンポポの茎を折ると白い汁が出てきてそれが面白くてよく花を摘んでいたね。季節が過ぎるとタンポポの野は一面の綿帽子へと変わり、風がそれを吹き散らかす前に綿帽子の野原で暴れて全部の種を空へと飛ばすのが好きだった。
今はもう実家の原っぱはすっかり造成されてタンポポの咲く姿は見ることはできない。そしてもはやタンポポごときで心躍らせるようなガキでもなくなったしな。ま、ジジイの感傷ですわい。いつもすまんのう。