最近読んだコミックなどなど

■雨の日はお化けがいるから/諸星大二郎

諸星の新刊は2013年から2017年まであちこちの漫画誌に掲載された短編作品をまとめて単行本化したもの。これが非常にバラエティ豊かで、例えば冒頭『闇綱祭り』は諸星らしい伝奇作品だし、 表題作は少年を主人公にした諸星ファンタジー、『ゴジラを見た少年』は風刺作、『影人』は古代中国が舞台、その他以降の数作はSFチックでシュールなコメディ、戯画風作品と並んでゆく。どれも諸星お得意のジャンルが並び、お得感満載、大変楽しめた。欲を言えばダークな伝奇作をもう1作欲しかったかなー。でもよい短編集です。

波よ聞いてくれ(5)/沙村広明
波よ聞いてくれ(5) (アフタヌーンKC)

波よ聞いてくれ(5) (アフタヌーンKC)

 

沙村広明の「やさぐれDJコメディ」第5巻、これまで斜め上65度ぐらいの超絶的なコメディセンスを披露してきた沙村だが、今回は趣向を変えて「監禁陰謀モノ」である。なにがどうなってるのかは読んでもらうとして、沙村独特のエグみがじわじわと沁みだす「沙村通常運転」ぶりを見せており、しかしそれを主人公鼓田ミナレの破天荒なキャラクターによりすれすれの部分で陰惨さを回避している部分がやはり巧いもんだなこの作者、と思わされるのである。

■ベアゲルダー(4)/沙村広明
ベアゲルター(4) (シリウスKC)

ベアゲルター(4) (シリウスKC)

 

またしても沙村、「ズベ公アクション」第4巻だ。こちらは持ち前のエグさを嬉々として繰り広げる沙村の変態ぶりがとことん楽しめる作品だ。もちろんアクションもいい。そしてこの4巻では物語展開のペースを落とし、幾人かの登場人物の過去が語られることになる。これがまたねっとりとエグい。さらに謎の人魚の正体がやっと発覚する。おおなるほど。そしてこの巻でも死体は山盛りとなっており、ページの間から死臭が漏れ出しそうなぐらいである。いやあ、沙村ってマジ変態だなあ。好っきやわあ。

無限の住人(全30巻完結)/沙村広明

 沙村広明の代表作にして超ヒット作『無限の住人』全30巻、満を持して全巻購入。いや、古本で全部で2180円と破格のお値段だったもんですから。で、ちょっとづつ読んでいるのだが、沙村の天才ぶりは知ってはいたがこの作品を読んでみるとさらにバケモノだったことが分かってしまった。第1巻刊行が1994年だが、この時に既に沙村の全てが完成されつくしているのだ。そのグラフィック、ストーリーテリング、グロさエロさ、奇妙なユーモア、そしてその凄まじい勢い、何もかもが破格で他に類を見ない。なんなんだこの漫画家。そしてこれからこの長大な物語を味わえる喜び。まさに僥倖である。

■GIGANT(ギガント)(1)/奥浩哉
GIGANT 1 (1) (ビッグコミックススペシャル)

GIGANT 1 (1) (ビッグコミックススペシャル)

 

奥浩哉、あのしょーもない『いぬやしき』後の連載コミックというから全然期待していなかったんだが、惰性で読んでみたらこれがなんと嘘だろっていうぐらい面白い。なんかこー『変』とか描いていた頃のナンセンスエロな初期の奥が戻ってきたような感触なのだ。しかしただ初期作を彷彿させるだけではなく不思議感たっぷりのSF風味が非常に楽しい。主人公が巨乳のAV女優という設定も二重丸。まだ1巻目なので相当謎の多い物語なのだが、次巻をかなり期待して待ってる。

プリニウス(7)/ヤマザキマリとりみき
プリニウス7 (バンチコミックス45プレミアム)

プリニウス7 (バンチコミックス45プレミアム)

 

 おお!プリニウスが燃えている!じゃなくてローマが燃えている!今作は冒頭いきなり凄まじいローマ大火を描きスペクタクルたっぷりだ!そして皇帝ネロを狙う陰謀!そしてプリニウスは砂漠をうろうろしている!スゴイ面白いし最近では最高なんだけどやっぱりどっちかにお話絞って描くべき物語なんじゃないかなあ。

聖☆おにいさん(15)/中村光

この作品の新作を読む度思うのだが、ホンットにネタ切れしませんよね?そしてクオリティ落ちませんよね?さらに「まだそんなネタがあったか!?」と驚かされますよね。本来ミニマルにしかなりえない題材にここまでキッチキチにネタ詰め込み続けるっていうのもちょっと驚愕だよな。勿論今回も面白いです。

■ブラックナイトパレード(1)(2)/中村光
ブラックナイトパレード 1 (ヤングジャンプコミックス)
 
ブラックナイトパレード 2 (ヤングジャンプコミックス)
 

 で、その中村光が別に長編を描いていたというからこちらも読んでみた。お話はブラックサンタクロースが北極で運営するブラック企業に勤めることになってしまった青年お話だが、『聖☆おにいさん』とは別テイストの中村作品を味わえるのは確かに楽しい。ただしこの物語、全然ブラック企業に見えない部分で設定が破綻してしまっているのが惜しい。

アオイホノオ(19)/島本和彦

 ホノオ君いよいよプロデビュー。という事からこれまでの青春ルサンチマン物語が業界物語に変化してきてるんだよね。かつてのしょーも無さが好きだったから、まあ後は読んでも惰性かなあ。