最近聴いた音楽:Hania Rani、Phil Manzanera & Andy Mackay、Tennant/Lowe

Hania Rani

Ghosts / Hania Rani

GHOSTS

GHOSTS

Amazon

ポーランド出身のポスト・クラシカル・ピアニスト、ハニャ・ラニはオレの大好きなアーチストだ。ハニャ・ラニは卓越したクラシック・ピアノの素養をコンテンポラリー・ミュージックに生かし、それをさらにチェンバージャズ、アンビエント、フォークといった音楽に展開することで独自の音世界を構築している。そのハニャ・ラニの新しいソロ・アルバムがこの『Ghosts』となる。ここ最近のハニャ・ラニの活動は『Venice - Infinitely Avantgarde』や『The Lost Flowers of Alice Hart』といったサウンド・トラック・アルバムが多く、良作ではあったもののオリジナル・アルバムのリリースが待たれていた。

今作『Ghosts』はこれまでのハニャ・ラニ作品をさらに発展させ前進したものとなっている。アンビエント曲「Oltre Terra」で始まるアルバムは、親しみやすいシンセポップ曲「Hallo」に引き継がれ、センチメンタルなヴォーカル曲「Don't Break My Heart」、シンセサイザー・シンフォニー「24.03」、カナダのシンガー、パトリック・ウィルソンとのデュエット「Dancing with Ghosts」、静謐なエレクトロニカ「A Day in Never」「Moans」、メランコリックなピアノ曲「The Boat」、オーラヴル・アルナルズと共演する「Whispering House」、 ポルティコ・カルテットのダンカン・ベラミーと共演した「Thin Line」、ジャズ・テイストの「Komeda」、そして最後にピアノソロ曲「Nostrgia」で締めくくられるのだ。

これらの多くはハニャのピアノやウィスパリング・ヴォイスと併せてエレクトロニカのトリートメントが施され、決して単一のテイストで終わらない複雑な音設計が成されている。しかし生み出される音はどれも親しみやすく、水のように清廉で、心を深く癒すのだ。


www.youtube.com

AM PM / Phil Manzanera & Andy Mackay

アルバム『AM PM』はロキシー・ミュージックのメンバーであるフィル・マンザネラとアンディ・マッケイのコラボレーション・アルバムだ。ギターとサックスを中心としたアンビエントな実験的インストゥルメンタル作品となり、マンザネラとマッケイの独特な音色とインタープレイが楽しむことができる。音の端々からはニューエイジクラウトロックなどの影響を感じさせるだろう。

アルバムはロキシー・ミュージックの50周年記念ツアーの後に制作されたもので、コロナ禍での閉塞感を打ち破るために自由に音楽を創造したいという彼らの姿勢が反映されている。アルバム収録曲「Blue Skies」のミュージック・ビデオは青空を眺めながら夢見るような気分になれるような美しいメロディとサウンドが特徴だ。彼らの音楽は言葉ではなく音色やテクスチャーで感情や物語を伝えるようなもので、聴く人によって様々な解釈ができるはずだ。共同プロデューサーはマイク・ボディで、他にもアンナ・フィービー、セス・スコット、ジョージ・グッド、ヤズ・アーメドなどが参加している。


www.youtube.com

Battleship Potemkin / Tennant/Lowe

戦艦ポチョムキン

戦艦ポチョムキン

Amazon

1925年に公開されたサイレント映画戦艦ポチョムキン』(セルゲイ・エイゼンシュテイン監督)といえば映画史に燦然と輝く古典的名作である。この『戦艦ポチョムキン』にペット・ショップ・ボーイズのニール・テナントとクリス・ロウがサウンドトラックを提供したのがこのアルバムとなる。これはロンドン市長ケン・リヴィングストンが主催するイベントのひとつ、トラファルガー広場での無料上演として企画されたものだった。

内容はテナント/ロウによる電子音楽とヴォーカル、それにストリングスが組み合わされたものとなっている、演奏はテナント、ロウ、ドレスナー交響楽団、指揮はジョナサン・ストックハマー、オーケストレーションはトルステン・ラッシュ。テナントとロウが作曲家であるため、このアルバムはテナント/ロウという名前でリリースされた。下の動画は映画『戦艦ポチョムキン』にテナント/ロウによるサントラが載せられたもので、その全編が収録されている。音楽により映画の新しい解釈ができるといった部分でとても面白い試みだ。


www.youtube.com