ちょっと小振りになったシリーズ新作『トランスフォーマー/ビースト覚醒』

トランスフォーマー/ビースト覚醒 (監督:スティーブン・ケイプル・Jr. 2023年アメリカ映画)

金属生命体トランスフォーマーが宇宙からやってきた悪の金属生命体軍団から地球を守るため熾烈な戦いを繰り広げる!というトランスフォーマー・シリーズの最新作『トランスフォーマー/ビースト覚醒』です。実はオレ、時々「しょーもない映画だなー」と思いつつ、このシリーズの結構なファンなんですよ。なんといっても車両からロボットへ、シュルルルルン!と変形するCGIがメチャクチャカッコイイじゃないですか!?

【物語】オプティマスプライム率いるトランスフォーマーたちが地球に来て間もない1994年。あらゆる星を食べ尽くす、惑星サイズの規格外な最強の敵「ユニクロン」が地球を次の標的に動き出した。この未曽有の危機に立ち向かうべく、プライムは仲間たちを集め、意図せず戦いに巻き込まれた人間のノアとエレーナ、そして地球を救う新たな希望であるビースト戦士たちとともに立ち上がる。

トランスフォーマー ビースト覚醒 : 作品情報 - 映画.com

映画トランスフォーマー・シリーズも2007年の1作目から早16年、まさかこんなに長く続くとは思ってなかったんですが、やはり人気があるのでしょうか、スピンオフを含めたらこの『トランスフォーマー/ビースト覚醒』で7作目になっちゃうんですね。1作目から5作目までを「破壊王」ことマイケル・ベイが監督、さらに4作目までをスティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を担当していましたから、娯楽作品としてきっちり作られしっかりと面白いシリーズでした。オレは初期のミリタリー色の強い作風には批判的だったんですが、段々とその馬鹿馬鹿しさの虜になっていったクチでありました。

さてこのシリーズ、長くは続いていますがシリーズの折々で人間側の主人公が変わっています。1作目から3作目までがシャイア・ラブーフ、4作目5作目をマーク・ウォールバーグが主演しており、それぞれ物語的に連続していましたが、この『ビースト覚醒』ではまたもや仕切り直しとなり、主演を『イン・ザ・ハイツ』『アリー スター誕生』のアンソニー・ラモスが演じ、さらにマイケル・ベイに代わりスティーブン・ケイプル・Jr.を新たな監督として迎えています。

こういった交代劇があったせいか、今作『ビースト覚醒』はこれまでのシリーズにおけるスケールの大きさや徹底的な破壊の快感が鳴りを潜める形になっています。それにより、映画自体がシリーズで最も小振りで大作感があまり感じられません。ある意味スピンオフ作品だった『バンブルビー』程度の規模の作品に見えてしまうんですね。舞台はブルックリンとペルーの二つだけであり、登場人物も少なく、人間関係もそれほど複雑ではなく、政府秘密機関や軍隊もまるで登場しません。

製作費が落ちたのかな?とも思えましたが、どうもこれまでとあまり変わってもいないようで、これは監督・総指揮の交代が映画に反映してしまったのかな、と思えてしまいます。物語性も単純で(これまでも単純ではありましたが)、大きな膨らみを感じさせません。主演を演じたアンソニー・ラモスは健闘してましたが、語られる物語は病気の弟の挿話とか人間とトランスフォーマーとの共闘が高らかに謳われたりとか、ベタであり同時に視聴年齢をこれまでよりも低く設定している感じがします(まあこれまでもそんなに高かったとは思ってないですか!)。

ただこれは、スピンオフ作品『バンブルビー』がシリーズ中で最大の人気と評価を得たことからの企画変更があったからなのらしく、これまでの重厚壮大でカロリーたっぷりだった物語からシンプルでスマートな物語へ様変わりさせたのがこの作品のようなんですね。この『バンブルビー』効果は物語設定にも反映されており、『バンブルビー』が時代設定を1980年代にすることで観客に郷愁を覚えさせ評価を高めたように、この『ビースト覚醒』は1990年代のブルックリンを舞台に、その時代に流行したヒップホップ・ミュージックを流しまくることで懐かしさを感じさせようとしているんですね。

オレ的にはこれまでの重厚壮大な物語も好きでしたがちょっとお腹一杯に感じることもあったので、この幾分小振りになった新作もそれほど嫌いではないんですが、物足りないと言えばやはりちょっと物足りなかったかなあ。あとやはりベイ的な大仰な馬鹿馬鹿しさがなくなり、なんだか健全になってしまった部分も物足りないように思えました。ただしロボット変形はこれまで通り大満足で、女性型トランスフォーマーが登場したり(これまでも登場してましたっけ?)、動物型トランスフォーマーが人間型に変形するシーンでは映画館で思わず「うおおカッケー!」と漏らしてしまいました。