スティーヴ・シャピロによる映画『タクシードライバー』写真集

■Taxi Driver / Steve Schapiro

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 映画『タクシードライバー』の写真集というものが存在すると知ってオレの心はザワついたのである。

オレのセーシュンを決定付けた映画『タクシードライバー』、しかしもはやセーシュンでもなんでもないオレにとって今更十年一日の如くああだこうだと言及するのも進歩ねえなあと思っちゃう映画『タクシードライバー』。こじらせた過去の思い出が強烈に染みついている映画だからこそ、いいおっさんになった今としてはそっと封印しておきたいのだ。

そう、『タクシードライバー』は、オレにとってはメンドクサイ案件なのである。以下にオレが大昔ブログで書いたタクシードライバー評を貼っておく。血を吐くかの如き陰鬱な内容なので心して読むといい。

そんなことをグダグダ思いつつ、アマゾンのカートに入れたり削除したりしながら、結局、買った。だってボーナス出たし。

そして到着したその写真集はこんなバカデカイ本なのであった。しかも分厚いんですよ。なにがどうなってるんだよ。

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出版元は良質なアート本をリーズナブルな価格で提供するお馴染みドイツの出版社TASCHEN Books。カメラマンの名はスティーヴ・シャピロ。ヴァニティ・フェア、タイム、ライフなどで活躍する著名な写真家であり、その作品は多くの博物館コレクションに所蔵されていたりするのらしい。

そして写真集を開いたオレは、その豊富で鮮明な写真の数々に途端に魅了されてしまった。映画のスチール写真の持つ強烈な説得力を思い知らされてしまった。

ここにある写真の多くは映画で見知っているワンシーンである。映画館の大きなスクリーンでも家にあるそこそこに大型のTVでも散々見てきたシーンである。にも関わらず、写真集収録のスチールは、それらを上回るほどの鮮烈な画像を見せるのだ。動いている画像とそこから切り出された画像の違いなのだろうが、「そのシーン」のディテールが圧倒的なのだ。解像度の高さは言うまでもない。そして大型本という迫力もそこに加味されるのだ。これは、凄い。オレはこの写真集によって、改めてもう一度、映画『タクシードライバー』を「発見」したのである。

さらにこの写真集にはある驚くべき特色が存在する。それは、レーティングを下げる為画質を落とされてしまった映画クライマックスの残虐シーンを、鮮明なスチールで残している、という点だ。画質を落としていない映画フィルムは現存していないのらしく、即ち映画『タクシードライバー』の本来のクライマックスの映像(画像)を見る事が出来るのはこの写真集のみということになる。本来のクライマックスシーン。それはどこもかしこも鮮血と血糊に塗れたえもいわれぬスプラッタ―の饗宴である。それはひたすらおぞましく、タガが外れたかのように狂っている。しかしだからこそ、映画『タクシードライバー』とはどういう映画だったのかを、この写真集は正しく伝えるのだ。

また、この写真集では映画スチールのみならず撮影中の様々なオフショット、さらに監督であるマーティン・スコセッシの姿が写し出されている。血塗れモヒカンの顔で屈託なく笑うロバート・デ・ニーロ、出演者やスタッフに真剣そのものの顔で指示を出す若き日の監督スコセッシ。

そして、おお、おお、オレのセーシュン時代の心の恋人、ジョディ・フォスター。当時13歳だった彼女の、13歳とは思えない、奇妙な妖艶さ。当時オレは、『タクシードライバー』を劇場で観て、この映画と、そして銀幕に映し出された彼女に、一発で恋をしてしまった。あの時のオレも、彼女と同じ1962年生まれの同年齢だった。今でもオレは、ジョディ・フォスターを見るたび、「彼女もオレも同じ年で、そして同じように年を取ったんだな」とつい思ってしまう。

TASCHEN Booksのこの写真集についてのウェブ・ページ。以下の写真はこのウェブ・ペ―ジのものである。

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Taxi Driver

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