シッダールト・マルホートラ、ソーナークシー・シンハー主演のクライム・サスペンス『Ittefaq』

■Ittefaq (監督:アバイ・チョープラー 2017年インド映画)f:id:globalhead:20180303183714j:plain

二つの殺人、二人の容疑者、二つの証言。映画『Ittefaq』錯綜する二つの殺人事件捜査を追うサスペンス・スリラー映画です。主演はこのあいだ『A Gentleman』をこのブログで紹介したばかりのシッダールト・マルホートラ、最近では『Akira』(2017)『Force 2』(2017)の出演があるソーナークシー・シンハー。さらに共演として『Mom』(2017)のアクシャイ・カンナー。監督は長編初のアバイ・チョープラー。

《物語》雨の中を猛スピードで走る車がクラッシュする。車から這い出た男の名はヴィクラム(シッダールト・マルホートラ)、英国の作家だ。彼はホテルで死体となって発見された妻の殺人者と疑われ逃走してきたのだ。ヴィクラムはあるアパートに逃げ込むが、暫くしてそのアパートから一人の女が飛び出しパトカーを制止する。女の名はマヤ(ソーナークシー・シンハー)、彼女の部屋に突入した警官たちが見たものは、マヤの夫の死体の前で呆然とするヴィクラムの姿だった。

物語は二つの殺人事件の前で錯綜します。ヴィクラムは妻を殺したのか、殺していないのか。マヤの夫を殺したのはヴィクラムなのかマヤなのか。ヴィクラムとマヤ、それぞれの証言は食い違い、そしてそれを証明するものが殆どありません。面白いのはこの二人、どちらも怪しいという事。ヴィクラムが妻を殺しても殺していなくとも、その同じ夜にまた別の殺人を犯してあまつさえ警官に簡単に逮捕されてしまうのは確かに妙。それではヴィクラムはその夜たまたまマヤが夫を殺した現場に入り込んでしまったのか。それも妙だが、マヤが夫を殺した現場に赤の他人のヴィクラムをむざむざ招き入れてしまうというのも妙。一見無関係な二つの殺人事件が重なり合うことにより、事件究明がさらに困難になってしまっているんです。

この事件の捜査を担当する刑事の名はディヴ(アクシャイ・カンナー)。インドのクライム・サスペンスにしては珍しく(?)、決して激することなく常に沈着冷静に淡々と容疑者二人の尋問を行い、食い違う証言と当時の状況を推理しながら事件の真相に迫っていきます。そして少しづつ状況証拠や証言を得られるのですが、ここがまた面白いのは、それらがどれも容疑者二人に別々に不利になるものであり、真相究明は常に一進一退を繰り返すのです。このクールなディヴに対し、周囲の警官たちは有象無象の愚鈍な連中ばかりで、彼らの頓珍漢な行動が映画に乾いたユーモアをもたらしており、決してダークでハードなだけのサスペンスに貶めていない部分が作品を豊かにしています。

こうして謎と疑惑にまみれながら物語は進んでゆき、決して飽きさせることなくクライマックスへと向かってゆきます。予想を裏切る結末はきっと観る者を満足させることでしょう。シッダールト・マルホートラ、ソーナークシー・シンハー、アクシャイ・カンナーといった俳優陣の演技を眺めていられるだけでも時間の無駄にはなりません。上映時間も105分と緊張感を持続させながらいい具合にサクッと観られる時間だし、錯綜する事件捜査ではありますが頭捻んなきゃいけない難しいセリフや展開もないので、気軽に観られるスマッシュヒット作でしたよ。

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