映画『アサシンクリード』は「エヴァンゲリオン」だった?

アサシンクリード (監督:ジャスティン・カーゼル 2016年アメリカ映画)


映画『アサシンクリード』はSF的な設定で展開する現代と、テンプル騎士団とアサシン教団とが対立するルネサンス期のスペインの二つの時代を行き来して描かれる物語だ。
現代。死刑囚カラム・リンチ(マイケル・ファスベンダー)はマドリードにある謎の研究施設・アブスターゴ社に幽閉され、先端科学によるある実験の被験者となっていた。それは彼のDNAを遡り、その先祖が体験したある時代を再現する実験だった。その時代とはルネサンス期のスペイン。そしてリンチの血に眠る先祖とはテンプル騎士団と対立するアサシン教団の一人、アギラールだった。アブスターゴ社の博士ソフィア(マリオン・コティヤール)とその父アラン(ジェレミー・アイアンズ)はアギラールの行動を通して歴史の闇に消えた秘宝"エデンの林檎"を探し出そうとしていたのだ。そしてその"エデンの林檎"には恐るべき力が秘められていた……。
とまあそういう内容の『アサシンクリード』である。映画の見所は中世スペインの目を見張るような壮麗な建造物の映像、そしてその建造物を縦横無尽にバルクールしまくりながら敵と戦うアサシン、さらに現代、DNAの歴史を遡る為に作られた奇怪な装置群とよく分かんないけどチカチカしてなんだか物凄いインターフェイス、さらにマイケル・ファスベンダーマリオン・コティヤールジェレミー・アイアンズシャーロット・ランプリングといったヨーロッパ俳優が重厚な演技を見せるといった部分だろう。監督は観てはいないけど『マクベス』を映画化した人なのらしい。いやー今やゲーム映画もこんだけ豪華な事やっちゃうんだなあ、としみじみと思った。
ところでオレはこの映画を観ながら「エヴァンゲリオンみたいだなあ」と思えてしまった。まず主人公リンチはシンジ君だ。彼は望んでもいないのに歴史遡行マシンに乗せられるが、オペレーターがシンクロ率をやたら連呼する所がまずエヴァっぽい。リンチが本人の知らない理由で"選ばれた者"である所もエヴァらしい。
リンチが中世世界で戦い現代に戻ってくるとエヴァで戦った後のシンジ君みたいに無味乾燥な病室(のような部屋)で目覚めるのもエヴァを彷彿させる。傷ついたリンチが漬けられる薬液プールはLCL溶液を思わせた。リンチは首筋にケーブルを埋め込まれるがこれなんかはアンビリカルケーブルだ。ということはリンチはシンジ君でありエヴァ本体でもあるということだ。だからこそ後半、リンチはエヴァよろしく暴走し、そして覚醒する。
リンチの面倒をみるソフィア博士はいわばミサトさんだろう。ソフィア=ミサトさんはリンチ=シンジ君には優しく同情的だ。そして彼のプロジェクト敢行を信じ、彼の行動を半ば黙認する。そのソフィアの父であり全てを取り仕切る男アランはゲンドウということになる。だからリンチ/ソフィア/アランのいる施設はネルフということだ。アランはリンチを道具としてしか見ていないが、これはシンジ君とゲンドウの関係性を思わせる。そのアランは歴史遡行プロジェクトをある目的により遂行しているが、その目的自体がエヴァ人類補完計画に似ている。
さらにアランの背後では怪しい教団が指示を出しており、これはさしずめゼーレということになる。アランと教団の目的を完遂するには"エデンの林檎"なる歴史的遺物が必要なのだが、これは人智を超えたパワーを持ったキーアイテムなのだ。これなどはエヴァでいうところのロンギヌスの槍そのものだろう。さらにクライマックス、アブスターゴ社の職員が虐殺されまくるシーンはエヴァのクライマックスにおけるネルフ職員虐殺シーンと被さる。
こんな具合に『新世紀エヴァンゲリオン』とよく似ている部分の多い『アサシンクリード』だが、まあたまたま似ただけか、もしくはオレが勝手にこじつけているだけなのだろう。そういえば中世スペイン世界ではアギラールと随行する女性キャラがいたが、これはレイとかアスカの役割なんだろうか。やっぱり「あなたは死なないわ、わたしが守るもの」とか言ってほしかったな!または「あんたバカァ!?」とか。それにしても実はオレ、ゲームのほうの『アサシンクリード』は全くやってないんだが、この映画観たらやりたくなってしまったな!