ブロードウェイ・ミュージカル『キンキー・ブーツ』を観に行った


先日は相方さんと二人で渋谷シアター・オーブで公演中のブロードウェイ・ミュージカル『キンキー・ブーツ』を観に行きました。
もともとこのミュージカル、2005年に公開されたイギリス・アメリカ合作映画『キンキー・ブーツ』を元にして作られています。舞台となるのはイギリスの田舎町ノーサンプトンにある老舗靴工場「プライス&サン」。経営難となったこの工場のオーナー、チャーリーはふとしたことから知り合ったドラァグクイーン、ローラにインスピレーションを得て、ドラァグクイーン用のブーツを作ろうと考えます。チャーリーはローラをデザイナーとして迎えブーツ作りに挑戦しようとしますが、従業員のローラへの偏見、恋人との軋轢がそれを阻みます。さてチャーリーは無事"キンキー・ブーツ"を作り上げることが出来るのか?というのがストーリー。
映画ではイギリスの不況を背景に、会社経営の困難に立ち向かうオーナーと従業員、そしてゲイ差別の克服と友情が描かれ、同時にドラァグクイーンであるローラのヒップな衣装、素晴らし歌と踊りが堪能できます。ゲイという設定なのでローラは男性が演じますが、これがもう十分に堂々として美しく、時にユーモラスに時に悲哀を込めてキャラクターを演じ切っていました。ローラのドラァグクイーン仲間も多数出演しますが、この衣装もまた派手派手しく百花繚乱、こんな彼女らのダンスシーンは実にゴージャスかつ楽しくて、舞台を大いに盛り上げていましたよ。
一方靴工場従業員たちは見た目も服装もまるで全員GAPでも着ているんじゃないかと思ってしまいそうなラフで地味で気取らないカジュアルウエアばかり、さらに配役が全員背が低くお肉の付いた俳優ばかりが並んでおり、ローラたちの夢にようなゴージャスさに対比するリアルさを醸し出しています。でもリアルで地味とはいえ誰もがきっちり個性を持って描かれ、それがまた楽しかったりします。この辺のきっちりした区分け方に対応できる俳優がきちんといるという部分でブロードウェイ・ミュージカル俳優の層の厚さと充実ぶりを感じました。
さらに楽曲のほうはあのシンディ・ローパーが提供しているということなんですね。それもあってかどの曲も親しみ易く情感豊かな曲ばかりで、音楽の部分でも楽しめるでしょう、特にオーナーに恋した一従業員の女の子が、自分の恋を自虐を取り交ぜながらコミカルにしかし切なく歌い上げる曲などは、そのキーの高さも相まってまさにシンディ・ローパーの曲そのもので、ある意味この舞台は『キンキー・ブーツ』にシンディの世界観が合体したかの様な趣さえあります。
ちょっとだけ難を挙げると舞台に登場して演技しあるいは踊る人数がとても多く、舞台が狭く感じるほどでしたが、そのせいか演出に若干交通整理の足りなさを感じはしました。また、映画でもそうなんですが、オーナーが中盤から突然ゲイに対して差別的になるシーンは「じゃあ今までは何だったの?」と思わせる唐突さがあって、この辺やはり説明不足だったかもしれません。また、前向きさを強調する物語は若干単純に思えないこともありません。とはいえ、それらは全て歌と踊り、衣装とキャラクターの楽しさ、変幻自在な舞台装置の驚きで十分カバーしていました。そしてクライマックスの和解のシーンで、物語は感動的に盛り上がってゆくんです。いやあ、楽しかったなあ!
↓劇場に展示されていた『キンキー・ブーツ』の衣装の数々。派手派手で素晴らしい!!


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