謎の超巨大惑星を彷徨する3種の知的種族〜『オマル2〜征服者たち』 ロラン・ジョヌフォール

オマル2 ー征服者たちー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ヒト族、シレ族、ホドキン族の3種族による激烈な紛争が勃発し、のちに暗黒時代とよばれるシレ暦9世紀中頃。ヒト族の英雄ジェレミア中尉は、最高司令官ハイダール大元帥から密命を受ける。半世紀前にシレ族から鹵獲した超兵器を境界地域まで運び、それを使って極秘任務を達成せよというのだ。一方、ステイ高原の巨大ピラミッドに参 集した3種族の大使たちが、26年に一度のアエジール族との交渉を開始しようとしていた頃、太陽の光を遮って地表を闇と冷気の世界へと変える「闇のプレート」が突如出現し、ヒト族の領域を侵しつつあった……壮大なスケールのプラネットオペラ、待望の第2弾!

「総面積は地球の5000倍にもおよぶ」という謎の巨大惑星オマル。ここではヒト族、シレ族、ホドキン族という3種の知的生命が抗争を繰り広げていた――。『オマル2〜征服者たち』は『オマル-導きの惑星-』に続くフランスSF作家ロラン・ジョヌフォールの【オマル・シリーズ】第2弾だ。
このシリーズの主人公はなんといっても舞台となる「謎の巨大惑星オマル」だ。『オマル-導きの惑星-』にしてもそうだったが、3種の知的生命体がオマルの大地で冒険を繰り広げる様子を通して、この惑星の謎に満ちた全貌を少しづつ明らかにしてゆく、という趣向が凝らされている。
この「オマル世界」、超巨大天体であるということと併せ、過去において3種知的種族が突然の宇宙船団拉致によって強制的に植民化された世界である、という謎を孕んでおり、さらに地下資源が乏しいために金属による工業化が進まず、技術レベルが超科学とローテクの混在したスチームパンク的世界を形作っている、という部分がなによりも特徴的な世界を生み出している。
そしてこの『オマル2〜征服者たち』では3つの物語を平行して描きながらオマルの大地を襲ったある災厄を描くこととなる。ひとつはジェレミア中尉による極秘の超兵器奪取作戦。ふたつめは天を覆う「闇のプレート」の出現により突然の闇に閉ざされ氷河期化しつつあるオマルを彷徨う地図作成調査隊の脱出行。みっつめは26年に一度天空からやってくる謎の超存在アエジール族と3種混合知的生命大使らとの交渉の裏で渦巻く陰謀。
1作目『オマル-導きの惑星-』は飛行船による冒険を描いていたが、この2作目では原子力機関車による氷河化した大地の走破がメインとなる。主人公らはヒト族軍隊に属し、行く手を阻む他種族との熾烈な戦闘場面が描かれ、前作にはなかったスペクタクルを味わうことができる。いわば「世界観の紹介」が主要な要素になっていた前作に比べ、今作ではいよいよオマルにおけるドラマが展開してゆくというわけだ。そして主人公らは任務のため、どこまでも果てしない大地を疲労と焦燥にまみれながら、文字通りボロボロになりつつ目的地へと向かうのだ。

オマル2 ー征服者たちー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

オマル2 ー征服者たちー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

オマル-導きの惑星- (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

オマル-導きの惑星- (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)