もう"消耗品"なんて呼ばせねえッ!〜映画『エクスペンダブルズ2』

エクスペンダブルズ2 (監督:サイモン・ウェスト 2012年アメリカ映画)

  • あの"消耗品軍団"がさらに男臭く汗臭くパワーアップして帰ってきた!?という主演シルベスター・スタローン他数多くのアクション・スター皆々様が勢揃いで登場するアクション映画続編です。
  • お話は今回満を持して登場のジャン=クロード・ヴァン・ダム扮する悪の武装組織とお馴染み"消耗品軍団"の皆々様が、アルバニアの地下深く隠された旧ソ連の廃棄プルトニウムを巡って血飛沫切り株弾丸砲弾乱れ飛ぶ地獄の戦闘を繰り広げるというもの。まあ要するに、ズドドドドドド!ウギャーウギャー!ドッカンドッカン!なわけですよ。
  • なにしろオープニングから飛ばしまくりブチキレまくりのアクションに次ぐアクションであります。前作クライマックスの大規模破壊行為を髣髴させる壊せ!殺せ!みんな火の海だああ!と言わんばかりのド派手な戦闘が映画開始後すぐ始まっちゃいます!"消耗品軍団"の皆々様、もう阿修羅の如く殺戮・破壊をやりまくってくれるので、そのあまりの無双ぶりに観ていてちょっと笑っちゃいました。いや、楽しくて!
  • しかし"前作を髣髴させる"のはここまで。ここからはジャン=クロード・ヴァン・ダムが親玉を務める【悪の傭兵組織サング】と【消耗品軍団エクスペンダブルズ】との遺恨を掛けた壮絶な戦いへと繋がっていくんですね。いやなんかプロレス団体の抗争みたいだなあ。
  • 前作は「エクスペンダブルズはスゲエんだぜ!?」と知らしめるためにひたすらハイテンションにアクション(と殺戮行為と破壊)を繋げていきましたが、1作目が大ヒットし、メンツのお披露目も終了したということでこの「2」は若干余裕のある造りになっていますね。要するにすっとぼけたシーンや緩いシーンが1作目以上に多かったってことですね。ロックのアルバムでいうとデビュー作がハイテンポの曲ばっかりだったが、2作目はスローな曲やレゲエのリズムの曲を入れてみて変化を狙った、といった所でしょうか。
  • そして今回ジャン=クロード・ヴァン・ダムが悪の親玉ということで、敬意を表してということでしょうか物語の流れがヴァン・ダムとのガチンコ勝負へと収斂して行く、というつくりになっており、前作のような破壊また破壊ばっかり、という流れにはなっていないんですね。
  • それと、スタローンお得意のウエットな人情話(お前らの無念、俺が晴らす!)が前作以上にフィーチャーされていて、ああスタローン本当にこういうの好きだよなあ、とにまにましていました。
  • そしてやはり嬉しいのはスタローン、シュワルツェネッガーブルース・ウィリス揃い踏みアクション・シーンでしょう。まあ仲良く並んで銃ぶっ放してるだけでしたけど、映画ファンにはまさに眼福といっていいシーンでしたね。
  • 善玉は隠れもせず仁王立ちになったままアサルト・ライフルぶっ放しまくってるのに、悪玉の弾丸は善玉にかすり傷さえ負わさず、かわりに善玉の弾丸は全部悪玉をなぎ倒す!という最近のアクション映画なら考えられないような古臭いアクション映画のお約束をてらいもなく運用し、しかしそれでも強引に納得させちゃうのは、このスタローン、シュワルツェネッガーブルース・ウィリス「エクスペ御三家」パワーが合体し人智を超えた神秘のエネルギー場がそこに発生しているから、ということで瞬時に理解できちゃうんですね!
  • おまけに悪玉軍団が善玉軍団にふいうち食わせても、そこで全員ぶっ殺しときゃいいのにそれじゃあ映画が終わってしまうから、「生きて辱めを覚えるがいい!」とか余裕ぶっこいたこと言ったばかりに、後々善玉軍団に追撃されてやっつけられちゃう、というのも今じゃあ誰もやんないお約束ですけど、それさえも納得させちゃうのがスタローン、シュワルツェネッガーブルース・ウィリスの(以下略)
  • しかも絶体絶命のピンチにデウス・エクス・マキナよろしくチャック・ノリスが登場し、赤子の手を捻るよりも簡単にことを収める、という、普通なら禁じ手でしかない展開を堂々と見せちゃう、というのにも逆に度肝を抜かれました!
  • こんな【ご都合主義テンコ盛り】の展開なのにも関わらず、それでも全然問題無い、むしろどんどんやってくれ、ぐらいに思うのは、彼らが「ヒーロー」だからなんですね。スタローンにしろ、シュワにしろ、チャック・ノリスにしろ、彼らはこの『エクスペンダブルズ2』の役柄だけではなく、その背後に数々の映画のヒーローの役柄を背負っていて、その後光があるからこそ、彼らの神がかりとも言える行動は、問題無し!てなことになっちゃうんですよ。
  • こういった「ヒーローはかっこよく登場しそして無敵である」という、複雑化した現代の物語ではもはや通用しないはずの手を、馬鹿馬鹿しくもまた鮮やかに蘇らせちゃった、という部分が「オールスターアクション映画」であることの強みだと感じましたね。"かっこよく無敵のヒーロー"を演じられるのは、かつてかっこよく無敵のヒーローだったエクスペンダブルズ・メンバーの皆々様だからこそ、ということなんですね。
  • そういった意味で、この『エクスペンダブルズ』は、昨今の映画的定説を持つ物語を放棄した、というか相手にしていない、数々のスターの「俺がスターだ文句あるか」のドヤ顔をひたすら愛でるためだけに成立している映像クリップである、という点で、もはや映画ですらないのかもしれないんですよね。いうなれば歌舞伎人気俳優が大見得を切る場面を収集した映像集とでもいいますか、そういった逸脱の仕方が面白いなあ、でも面白いからもっとやってくれ!と思った映画でした。
  • 最後に、パンフに載っていた面白い話を。チャック・ノリスは、かつて手榴弾を投げ、50人を殺害した。その後、手榴弾が爆発した」(チャック・ノリス・ファクト(事実))



Expendables 2

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【ムービー・マスターピース】 『エクスペンダブルズ』 1/6スケールフィギュア バーニー・ロス

【ムービー・マスターピース】 『エクスペンダブルズ』 1/6スケールフィギュア バーニー・ロス