■ネイビーシールズ (監督:スコット・ウォー、マイク”マウス″マッコイ 2012年アメリカ映画)
米軍特殊部隊「NAVY SEALS」がテロリストとの戦いに挑む姿を描いた映画『ネイビーシールズ』を観てきました。「NAVY SEALS」というのはアメリカ海軍において過酷な訓練を乗り越えた者だけが入隊できる精鋭部隊の名称で、アメリカの幾つかの特殊部隊の中でも海からの潜入を得意とする部隊ですが、もちろん空・陸からも作戦は自在に行うことが出来、それはこの映画でも描かれています。最近ではウサマ・ビンラディン暗殺を遂行した部隊としても知られているんですね。
なんといってもこの映画の見所はホンモノのNAVY SEALSの協力のもと、ホンモノのNAVY SEALS部隊が主演し、ホンモノの武器や兵器、戦闘車両が登場し(原子力潜水艦まで!)、実際であれば行われたであろう作戦と任務遂行の様子をホンモノっぽく描いたフィクションである、ということに尽きますね。なんと撮影では実弾ぶっ放していたそうです!射弾された弾丸の軌跡がどうもはっきり見えてる、と思ったらそういうことだった!危な過ぎないか、と思うかもしれませんが、撃っているのはプロ中のプロなので何も問題無かった、とのこと!
物語はまず南米コスタリカでの拉致されたCIA職員の奪還作戦、テロリスト監視の為の洋上からのアフリカ上陸作戦、そして恐るべき兵器を携えたテロリストの潜入するメキシコでの掃討作戦、というふうに展開してゆきます。敵アジトへ侵入するコスタリカ作戦での隠密行動、そして人質奪還後の弾丸乱れ飛ぶ脱出劇、続くアフリカ上陸作戦では巡航ミサイル原潜からSDV潜水艇に乗り込んでのアフリカ潜入、さらに洋上でのテロリスト確保、クライマックスのメキシコでは暗視カメラとレーザーサイトを使用しての銃撃戦と、どの場面もリアルな作戦遂行活動、リアルな武器使用方法がひたすら描かれてゆき、その緊張感は半端ありません。その緊張感というのは一つ間違えば死ぬであろう緊張感と、確実に敵を射止める方法を遂行するための緊張感なんですね。
いや、別に本物だけが至上であり、そうじゃない作り物は結局つまらない、と言いたいのではありません。100%絵空事のよくあるアクション映画でも、戦闘のあり方や武器の使い方が"それらしく"見えていればそれでいいのです。軍人そのものの訓練された動きが出来なくても、そこは演技やカット割りや特殊効果で"それらしく"見えていれば全く問題が無いんです。ただ、そう見えない映画って意外と多くて、ランボータイプの映画ならまだしも、例えばカバリング無しで敵に突っ込んでいったりとか、時々観ていて「そりゃないだろ」と興醒めすることがあるんですよ。そういった意味で、本物な兵士の動きは全て合理的で、さらに細部でもいろんなことで気付かされる部分があり、そこから生まれる緊張感といったものが映画を面白くしているんですね。一番想像を超えていたのはテロリストへの尋問シーンでしたね。尋問官は血に飢えた目で舌なめずりしながらテロリストのキンタマに電極付けたりなんかしません。なんとスーツ姿でさっそうと現れて、さらに笑顔で相手と握手した後に尋問を始めるんです。まあ汚い尋問も実際にはあるのでしょうが、こういった方法での尋問を見せられたのには驚きましたね。
映画では現役のNAVY SEALS隊員が役を演じますが、NAVY SEALSそれ自体が主役である映画である以上、特に主役隊員というものはないんですね。だから誰かが突出して活躍したり目立ったりはしないので、配役的には(俳優ではない以上)地味であるのは致し方ないでしょう。また、隊員と家族とのふれあいを描く序盤は、NAVY SEALS隊員のつかの間の日常を見せる意味があったのでしょうが、個人的には特にあってもなくてもよかったでした。
さて自分がこの映画に何故興味を引かれたのかというと、ひとえに自分の好きなFPSゲームで見られるような映像を、映画の中で観たかったからなんですよ。この映画にはアメリカ兵力の誇示や軍事プロパガンダ的な意味もあるのでしょうし、そういった部分で煙たく思う方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、自分個人はただただゲームで見られる武器・兵器の実際の姿と、ゲームで活躍する兵士の実際の働きの様子が見たかったんですよね。アメリカでは結構ヒットしたらしいこの映画、実際のところ自分のようにFPSの流れで見に行った人も結構多いんじゃないかと思いますね。監督もその辺製作時にわかってたみたいで、劇中ではヘルメットカメラを駆使した一人称視点の映像が頻繁に出てきますが、これはまさにFPSじゃないですか!あと、メタルギアとか好きな人にもお勧めですね。
もちろんNAVY SEALSの作戦と兵士の面々は実際より格好良く描かれているのでしょう。作戦それ自体にしても、もし実際だったらこれだけ短期間に数珠繋ぎで作戦が展開するわけではなく、地道な情報収集が数ヶ月も続き、そして満を持して作戦遂行、となるのでしょう。しかしこれは映画、スピード感とドラマチックさが必要なんです。つまりホンモノを使いながらも、これはドキュメンタリーではなくフィクションで、ドラマはあくまでも娯楽作品であり、そして娯楽作品として上手くできているからこそ、ホンモノであることも生きている、また逆に、ホンモノであることを生かして、上手く娯楽作品へと繋げている、要するにホンモノであることだけで成り立っているわけじゃない、そういった映画だと思いますよ。
■ネイビーシールズ 予告編
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