ポリティカルだよおっかさん!〜映画『グリーン・ゾーン』

グリーン・ゾーン (監督:ポール・グリーングラス 2010年アメリカ映画)


イラク大量破壊兵器、ありゃあイラク戦争がおっぱじまる前から大概の人間は「またアメリカお得意のガセなんじゃねーのガセ?フセイン潰す為のカタリであって実際は石油の利権とかそーゆーのじゃねーの?」と思っていたでしょうが、実際イラクに派兵された兵隊サンはそんな疑問なぞこれっぽっちも抱くことなく律儀に職務をこなし、「どこだあ!?大量破壊兵器はどこなんだああ!?」と駆けずり回っていたんでしょうな。で、この映画の大量破壊兵器捜索班隊長ミラーさん(マット・デイモン)も、「あっちにスンゴイ兵器が!」と言われればあっちに行って突撃銃撃ちまくり、「こっちにトテツモナイ兵器が!」と言われればこっちに行って機関銃撃ちまくっていたわけです。しかしどれもこれもガセネタだらけで、「なんであっちもこっちもなんにもないんだあああ!?ガセネタばっっか掴ませてオメーら俺をナメとんのかああ!?」と偉いヤツにブチ切れるんですな。

まあしかし映画観ているこっちとしては「いやだって、もともとないって分かってるし」と冷めた気分になっちゃうんですが、命張った兵隊さんにとっちゃシャレになんないよなあ、とちょっと同情もするわけです。で、ここでマイケル・ムーア風のCIA職員が出てきてミラーさんに「いやどうもホントに大量破壊兵器は無いらしい」とゴニョゴニョ呟き、ことの真相を追求するべく協力を願い出たりするんですよ。ここでまた観ているオレは「だーかーら。もともと無いんだし」とか思いながらちょっと溜息ついちゃったりするわけです。そして「大量破壊兵器はあるから。あるんだから」と言い張る政府の高官の方とか「大量破壊兵器あるんだぜウシシ」と言ってるらしい謎の情報源の人とか「俺大量破壊兵器無いって最初っから知ってんだけど」とかほのめかすイラク将校とかいろいろ現れて、真実はどこなんだ!?という錯綜した展開になりますけど、「いや、何度も言うようだけど、大量破壊兵器、ないから。知ってっから。もう」と観るモンはやっぱり思うわけです。

しかしそれが物語の面白さを殺ぐとかそういうことはないんですわ。基本的にこの映画はアメリカを糾弾するのが目的じゃなくて、そういう時代背景に則ったポリティカル・サスペンス・アクションを作りました、ってことなんじゃないっすかね。ただ、時代的にちょっと近すぎるからまだ生っぽくて、政治的な側面をどうこう言われてしまうんだと思うんですな。じゃあこの映画はなんの映画かと言ったら、「こちとらあんたら信用して遥か離れた異国までやってきて命張って戦ってるっちゅうのに"みんな嘘でしたあ"っていったいどうゆうこっちゃねん!?」なのであり、短く言えば「ザケンなよゴルァ!?」っちゅーのが主題なんじゃないでしょうか(多分)!?その怒りが爆炎の花開く激しい戦闘となって描かれる、そういった漢気溢れる映画だと思って観るのが正解なんですよ。クライマックスの戦争ハイテク技術が画面に乱れ咲くスピーディーかつめまぐるしい追跡劇はさすが「ジェイソン・ボーン」シリーズの監督だと思いましたな。あ、ちなみにオレ「ジェイソン・ボーン」シリーズ大好きなんっすよ。あと『ハート・ロッカー』と合わせて観るといろいろ世界観の広がる映画だと思いましたね。