地震!雷!火事!エメリッヒ!〜映画『2012』

■2012 (監督:ローランド・エメリッヒ 2009年アメリカ映画)


2012年、地球は滅亡しちゃうんだよ!さて2012年に何故地球が滅びるのかというと、
・アンゴルモアの大王が寝坊したのである。
・人類保管計画が発動したのである。
・タイムカプセルに入っていた予言が当たり太陽フレアが爆発したのである。
・ヴォゴン人たちが「銀河ハイウェイ建設工事の立ち退き期限が過ぎたので、工事を開始する」と言って地球を破壊しに来たのである。さようなら、いままで魚をありがとう
・実は地球やその他の星が一団となって宇宙を落ちていて、地面に到着し「べちゃっ」と潰れたのである。
・ある男が目を覚ましたら地球になっており、その男の巨大化した糞やチンコにより地球は滅びたのである。
核融合発電機の設計ミスで地球がブラックホールに飲み込まれたのである。
CERNの粒子加速装置の実験失敗のせいである。
イルミナティにより奪われた反物質が漏洩したのである。
・地球のコアが回転を停止したのである。
デス・スターのスーパー・レーザー砲テスト時に惑星オルデランと間違えられたのである。
フリーザが襲来したのである。
スカイネットが審判の日を発動させたのである。
・邪悪な異星種族により射出されたマイクロ・ブラックホールが地球のコアを食い尽くしたからである。
ガミラスの遊星爆弾のせいである。
・その時イデが発動したのである。
妖星ゴラスが地球に飛来したのである。
・悪魔のハンマーのせいである。
ディープ・インパクトとかハルマゲドンとかメテオとかその他もろもろ。

とまあそういう諸般の事情により地球は滅びちゃうわけなんだが、この映画を観た人は誰もがこの言葉を思い浮かべるであろうと思うので取り合えずこのオレも言っておく。
見ろ人がゴミのようだ!
見ろ人がゴミのようだ!
見ろ人がゴミのようだ!
大事なことなんで3回お願いします。

改めて言うまでも無く地震・雷・火事・エメリッヒと表現してもいいぐらい人類絶滅世界終了大大大好きなローランド・エメリッヒのディザスター・ムービー『2012』である。マヤ暦が2012年までしかないから2012年が地球滅亡の日だよ!ということらしいが、実際はマヤのカレンダー職人(当然石をノミで彫ってカレンダーを作る)が2012年までカレンダーをこさえていた所を腹痛を起こしそのまま帰らぬ人となりカレンダー作成が中断していただけの話らしく(注:勿論大嘘である)、実際大騒ぎする必要も無いのだが、ノストラダムス商法の夢をもう一度と言う訳で「今度は一丁2012年滅亡ってことで世間を煽って大儲けしましょうや」などと祥伝社五島勉あたりが裏で小細工して始まったのが2012年滅亡説である。と思う。
まあそんな駄法螺は別にしても、この『2012』「物は壊れる、人は死ぬ、三つ数えて眼をつぶれ」とばかりに大量破壊と大量殺戮がVFX技術の粋を尽くした豪華フルコース映像となって目の前に展開し、あたかも「カタストロフ・アミューズメント」とでも言っていいような愉快で楽しいジェットコースター・ムービーに仕上がっている。いやあしかしデカイ物が徹底的に壊れる映像って何でこんなに楽しいんでしょうねえ。ビルのダイナマイト一発解体映像やドミノ倒しが実にエキサイティングなカタルシスを与えてくれるように、精魂込めてちまちまと作られたものを一瞬のうちに情け容赦なくぶっ壊すというのはマゾヒスティックな快感を伴うもんがありますよねえ。原爆や水爆のきのこ雲映像だって、あれだけ禍々しく非人道的なものであるにも拘らず見ていてキンタマがキュッとなるほどたまらなく美しいじゃありませんか。そしてそれを地球規模でやっちゃおうと言う訳ですから、この映画が面白くないわけがありません。
主人公家族がなぜあれだけの目に遭いながらずっと生き残ってるかというと、これは映画ですから、最後まで視点をひとつにしておく必要があっただけの話で、そういった意味では構成がスピルバーグの『宇宙戦争』と似たものがあったりしますな。ラストに近付くにつれ人類方舟計画みたいなSF展開になりますが、これはこれで人間同士の醜いエゴが剥き出されたなかなかに鬼畜な展開となっており、人類の救済を描くように見えて実は沢山人死んでギャッハッハッなサディズムニヒリズムが、監督エメリッヒの豊かな人間性を垣間見せて実に素晴らしいエンターティメント作品として完成しておりました。

『2012』予告編