キノコの形をしたぶっとい"アレ"は思ったよりデカかった…ッ!?

マタンゴ (監督:本多猪四郎 1963年日本映画)


みんな大好き和製海洋モンスターホラー映画『マタンゴ』である。実はこの映画、最近になってはじめて観たのだ。嵐のせいで謎の孤島に漂着したヨットの乗組員たちが、密林の奥に生息する巨大ハリカタ生物にズコズコやられちゃうという世にもおぞましい物語である。ただし相手が巨大ハリカタだけに登場人物のうち女性だけはあはんうふんと法悦の世界へ旅立ち、男どもは「あああそんなところにこんなものをああするなんてやめてもうゆるして」と精神を崩壊させてゆくのである。オレもやはり男のはしくれとして、巨大ハリカタに「やらないか」ともちかけられるなぞ、想像するだけでもう勘弁してくれと思ってしまう。…って、そんな話でよかったのか?

なにしろウィキペディアなんぞを読むと、「役にはそれぞれ元となったモデルが存在し、ヨットのオーナーである金持ちのバカ息子はコクドの堤義明、小心者の推理作家は大藪春彦、仲間を見捨ててヨットで逃げ出す船長は堀江謙一と、当時六本木で騒いでいた連中を酷い目に遭わせてやれと思いながら脚本担当の木村は本作を書き上げた」なんて書いてあり、これってスケベのことしか頭に無いクルクルパーの男女ワカモノたちを不気味な怪人が次々と惨殺してゆくという昨今のスラッシャー・ムービーと根っこのところが一緒じゃないか、という気すらする。モテてるヤツもイケてるやつも金持ってるやつもみんな大ッ嫌いだッ!いけすかない連中は全部血祭りなんだよッ!という特撮オタクのむせ返るようなルサンチマンが横溢しているという点で、マタンゴはジェイソンやレザーフェイスの異母兄弟ということができるかもしれない(ホントかよ)。

この映画を「小さな頃観てトラウマになった映画NO.1」に挙げている人もいるが、オレなんかが幼少時に観てトラウマになった映画というと、前にも書いたことがあるけど1968年公開の『ガンマー第3号 宇宙大作戦』と1966年公開の『海底大戦争』かな。「ガンマー」は映画に出てくるモンスターにやられた黒こげ死体がグロかったのと、「海底〜」は人間がサイボーグ半魚人に改造手術されるシーンがキモかった。でも両方ともオトナになってからDVD買いましたよ。あと人間が水みたいになっちゃって床にひろがってるんだけれどまだ生きてて…みたいな映像がメッチャ脳裡から離れない映画があったような気がするけど、あれは夢で見た光景なのかもしれない。それと1969年公開のアニメ『空飛ぶ幽霊船』。飲み過ぎると体が溶けるボアジュースというのが出てくるんだけれども、あれ観てしばらくジュースが飲めなくなったな。

さてこの『マタンゴ』、確かに得体の知れない菌類に体を乗っ取られるというのは生理的にキモチワルイものがあるけど、体表に菌が繁殖してグジュグジュになるのって、それって水虫じゃないのか?と考えると、実は『マタンゴ』は蒸し暑い南洋の島でみんなして水虫になっちゃいました!という映画ということも出来るわな!謎の島に漂着し次々に水虫になってゆく乗組員たち。「よ、寄るな!俺は水虫なんかになりたくない!」と叫ぶ主人公。「うふふ…水虫も悪くないわよ…」と囁くすっかり水虫に冒されたヒロイン。う〜んこれはまた別の意味でキモイ展開の物語だな!映画としては閉鎖環境の中でバケモノの出現に疑心暗鬼にとりつかれた登場人物たちが、ひとりまたひとりと餌食になってゆく物語、といった点で『エイリアン』や『遊星からの物体X』あたりの先駆的なモチーフとなった映画なんだなあと思いました。

マタンゴ予告篇



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ガンマー第3号 宇宙大作戦 [DVD]

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海底大戦争 [DVD]

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