■ブラッディ・バレンタイン (監督:パトリック・ルシエ 2009年アメリカ映画)
○炭坑節(ブラッディ・バレンタイン篇)
ハラワ〜タ〜出た出〜た 血飛沫〜出た〜 ヨイヨイ
ハーモニー炭坑の 中に〜出た〜
あんまり死臭が〜 キツイ〜ので〜
さ〜ぞや〜お月さん 吐きたかろ〜 サノヨイヨイ
バレンタインの日に炭鉱の町で惨劇が起こる!というホラー映画『ブラッディ・バレンタイン』である。炭鉱で惨劇、とか言っても坑道に巣くう巨大ヤゴ・メガヌロンが人々を襲いさらにそれを餌にする空の大怪獣ラドンが町を蹂躙する、という話ではないのである。この映画はツルハシを持ったDOKATAの人が「うああああああああ」とか喚きながら暴れ回るという映画なのである。DOKATAの人が暴れ回るからといってシャブやって電波が飛んできてるんだろ?とか思っちゃいけないのである。即ちこれはブルジョワジーに搾取されたプロレタリアートの叛乱を描いた映画なのだ、ということなのである。鎌と金槌ならぬツルハシによる革命、マルクス・レーニン主義者の皆さんなら涙を流して喜びそうなプロパガンダに満ちた社会派リアリズム映画、それがこの『ブラッディ・バレンタイン』なのだ。やっぱ肉体労働者を怒らせちゃあかんよ!立て万国の労働者!…というのは勿論冗談である。
まあしかしバレンタインを血に染める!というのならショボイ田舎の炭鉱町じゃなくて、溢れるリビドーで脳ミソそれ自体が怒張する海綿体状態になっちゃた若者たちが闊歩する都会が舞台の方がお話になりそうな気もするけどな。チョコレートボックスの中にデッドリー・スポーンみたいの(こんなヤツ)が潜んでいて、開けると犠牲者にガジガジ噛み付くのよ!こうしてバレンタインチョコレート食おうとするヤツはみんな血塗れ死体に!という『ブラッディ・バレンタイン』だったら面白かったかもな。この映画だとツルハシでえぐった心臓をチョコレートボックスに入れて大事なアノ人にプレゼント(はあと)したりしているけど、あんまりバレンタインデーの必然性を感じないんだよなあ。
でまあ、映画の方は誰が真犯人なのか!?とかいうミステリ仕立てで展開するんだけど、最初っからこっちは不死身のバケモノが下手人なんだろ?と思ってるもんだから逆に普通の人間が真犯人だったりすると白けるんだよなあ。それに主要人物である警官とその女房とその元カレの三角関係が描かれたりするんだが、その元カレというのが炭鉱会社の御曹司で、町を捨てて都会に出てたんだけどまた町に戻ってきてるとかいう設定なのね。だいたいそれなりにイケメンで御曹司なら都会でそこそこモテたろうに、なんでまたド田舎戻って他人の女房のケツ追い掛け回すのかわかんないんだよな。
で、ケツ追い掛け回すなら追い掛け回すで、御曹司らしく金にモノ言わしてオラオラと迫るとか黒い手段もあるだろうに、いい齢こいて真心一路なのよ。その割には簡単に炭鉱閉鎖言い渡していたけどな!あとどうもいまひとつ乗れないなあと思って考えてみたらヒロインが可愛くないんだよなあ。だって最初「ああこいつは真っ先にブチ殺される役だから不細工なんだろな」とか思ってたらそのまま主要人物になっちゃうじゃないですか。ホラー映画でヒロインが可愛くないのはちょっと致命的だよなあ。
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