トニー・スコットの『サブウェイ123 激突』は勢いの良さで観せる映画だった!

サブウェイ123 激突 (監督:トニー・スコット 2009年アメリカ映画)


トニー・スコット監督の『サブウェイ123 激突』を観て来ましたが、実に面白かったです。
トニー・スコットといえば喧しい音楽にギラギラした色彩感覚、そしてチャカチャカ切り替わる神経症的な編集で観るものをとことん疲弊させる実にサディスティックな監督といえるでしょう。なんかもういつもブチ切れてるような映画を撮る人なんです。それをトゥーマッチと思うかどうかは観る側によるけど、これまで評価の高い作品を送り出していることを考えるならその手法はそれなりに成功しているんじゃないかな。オレも好きな監督の一人で、最近だと兄貴のリドリー・スコットよりも好きかもしれない。

さてこの『サブウェイ123 激突』、地下鉄ハイジャックの映画なんですが、犯人グループの首謀者ライダー(ジョン・トラヴォルタ)がトニー・スコット映画そのもののように常にブチ切れ気味の演技を見せていて実に楽しい。やはりトニー・スコットの映画というは『マイ・ボディガード』にしろ『ドミノ』にしろブチ切れまくったヤツがメインにいると映えますねえ!地下鉄管制室の巨大ディスプレイに表示される列車の運行状況、グーグルマップを俯瞰しているかのような身代金搬送隊の進行状況などのサイバーな映像も『エネミー・オブ・アメリカ』や『デジャヴ』に通じる「世界なんか全部監視されてるんだあああ」というトニー・スコットらしい強迫観念に満ちていて楽しかった。

物語はこんな具合にトニー・スコット印の映像と物語展開で進んで行きます。パンパンに詰め込まれた情報過多な音と映像は観客の感覚を麻痺させ、強引に作品世界に引きずり込み、あとは勢いで映画を観せて行くんですな。勢い命だから物語の細かい齟齬や不整合感は観るほうも「ま、いっか」で納得してしまう!一番可笑しかったのは身代金の現金輸送をパトカー&バイクで行うシーン。このシーンも追突衝突雨あられで大変面白い演出なんですが、あとになって「なんでヘリコプター使わなかったの?」とか言ってるんですな。自分で撮ったシチュエーションに自分で突っ込んでんじゃねーよ!と大笑いでした。

他にも悪役ライダーは正体が○○なのにどうしてあんなに冷酷なのかとか車両に残されたノートパソコンのビデオチャット映像がそれほど生かされてなかったとかデンゼル・ワシントン演じる地下鉄職員のガーバーの賄賂云々のバックストーリーになんか意味があったのかとか、あとから考えりゃあいろいろ出ては来るんですが、なにしろスピード感と勢いと力技で相当面白く観せてもらったから細かいことは気にしない!やっぱりほら、人生でもあるじゃないですか、瑣末な推敲をグジグジ巡らせるよりとりあえず勢いでやっちゃったほうが上手く行くなんてことが。活きのいいのもひとつの取り柄、『サブウェイ123 激突』はそんな映画でありました。

■『サブウェイ123 激突』予告編