■プロメテウス (監督:リドリー・スコット 2012年アメリカ映画)
リドリー・スコット監督が自身の作品『エイリアン』の前日譚として製作した映画、『プロメテウス』です。「人類の起源の謎に迫る」とかなんとか勿体ぶったこと言ってますが、仕上がった映画はもっとずっと下世話で立派にエグいグログロ『エイリアン』映画だったのは確かでしょう。そもそも「人類の起源」だなんだというのは取っ掛かりに過ぎません。それに「謎」とかいっても「要するに人類はどっかの異星人に作られたもんだっていうお話なんでしょ?」ということは誰でも気付きそうな話の流れです。ええ。だから起源とかなんとかそういうのはそもそもどうでもいい映画なんです。
で、探査船を建造するっていうのがあの悪名高いウェイランド・ワタミ、じゃなくてユタニでしたっけ、あのブラック企業なわけでしょ、てぇことは送り込まれた乗組員・従業員はみんなどっかのバケモノに踊り食いにされてワタミ、じゃなくてユタニ(それにしても会社名似てる)の人柱となる、と、まあその辺も、映画『エイリアン』シリーズをなんとなく観たことがある人間ならすぐさま気付きますよね。というわけでこの映画の本当のテーマは「気色悪いバケモノが出てきて登場人物はみんなエゲツない殺され方をする」、もうその一点であり、そしてすべてのプロットはそのためのお膳立てにしか過ぎないんですよね。観客はみんな「早く気色悪いバケモノ出ねえかなあ!」とか「みんなどんなエゲツない死に方すんのかなあ!」とかわくわくしながら観ていればそれでいい映画でもありますね。
しかしそれだけだと普通にB級ホラーSFで、『イベント・ホライズン』あたりでも観ていれば事足りるんですが、単なるB級ホラーSF映画にしていないのは、やっぱり監督がリドリー・スコットだからなんですね。やっぱりねえ、さすがリドリー・スコットだけあって、ビジュアルがねえ、いちいちキマッてるんですよ!やっぱりこの人「SFは絵だ」って分かってらっしゃいますよね。オープニングの荒々しい自然を映し出した映像から始まり、宇宙船から宇宙船内から宇宙服からビーグルから、さらにエイリアン・テクノロジーのホログラム映像から、どれもこれも美しくて見ていてうっとりしちゃうんですよねえ。あのビジュアル堪能するだけの為にもう一回観たいぐらい。やっぱりこのへんのビジュアルへのこだわりは一級品でありましょう。だからある意味「高級B級ホラー映画」ということができるんだと思います。まあ『エイリアン』もある意味そんな映画でしたしねえ。ただ「モアイ像?」と誰もが一瞬思う宇宙人の顔の石像だけはいただけませんでしたが。
感触としては『エイリアン』に『遊星からの物体X』が混ざってさらに『エイリアン』をパクった海洋SFホラー『リヴァイアサン』をさらにパクったみたいな内容になっていますね。お話の流れは映画『エイリアン』のシナリオをなぞりつつもまた離れ、予想通りの展開と予想を覆す展開が交互にやってきて『エイリアン』ファンを喜ばしたり驚かせたりする部分が心憎かったですね。「ここで絶対これ来るよね!」とか「ここでこれが来るか!」とか「あーここはこういう展開にするのかー」とかいちいち納得してみたり頷いてみたり。ぶっちゃけ『エイリアン』シリーズは全作ビデオで買い次にDVDで買い直しさらにBlu-rayで買い直した『エイリアン』ファンの端くれとしては嬉しくてたまんなかったですね。『エイリアン』を知らない人はどう思ったかわかりませんが。
あと映画を観て思ったことをつらつらと。
- まず「遺跡に残された異星人のメッセージ」というのが「ムー」臭くてヤダ。
- 人類の起源宇宙人のやりたいことがよくわかんなかったけど宇宙人なんだからわかんなくていいんだと思った。
- やっぱりあれはモアイ像だろ。
- あの手術随分簡単にできすぎないか?
- 手術の後全力疾走すんなよ。
- アンドロイドの人はなんであそこまでやりたい放題なのにとがめられないんだ?
- プロメテウス号の中、人多過ぎ。何人乗ってるんだ?
- 笛吹くのかよ。
- 「異星人があれを作った本当の理由」がとてもいい感じにSFしていてオレ的にはグレッグ・ベアのSF小説『天空の劫火』あたりを思い出した。
- で、あのアンドロイドが将来レプリカントと呼ばれるようになって、ユタニ社は未来の街に「地球外の世界へ行こう!」という看板がかかった飛行船飛ばして、それにまんまと乗っちゃったあわれな人をエイリアン探索に使う、という『ブレードランナー』の裏シナリオということなんだな?
- で、シャーリーズ・セロン演じるお姉さんが人間かアンドロイドか?という問題は、そのうち発表されるディレクターズ・カット版『プロメテウス』にユニコーンの映像が出るかどうかで判断される、というオチですねわかります。
- 個人的にこの夏公開された『ライジング』とか『アベンジャーズ』とか『トータル・リコール』とかの大作映画の中で一番好きだった。なぜって一番グロくてエゲツないから!
- 続編作れ。観るから。キャッチコピーは勿論「今度は戦争だ!」、そしてラストはクイーン・プロメテウスとの戦い!(なんだそれ)
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